SSブログ

今年のノーベル化学賞について [科学ネタ]

今年のノーベル化学賞は
準結晶を発見したイスラエル工科大学のShechtman教授に与えられました。

私も以前に勉強したことがある
有名な教科書キッテルの固体物理学入門には
結晶には一回対称(任意の図形)
二回対称(例えば長方形)
三回対称(例えば正三角形)
四回対称(例えば正方形)
六回対称(例えば正六角形)しかないと書いてあります。
五回対称の図形にはどうしても隙間ができてしまうため、
有り得ないというのが定説であり科学的常識でありました。
注:~回対称というのは例えば正三角形は三回転がせば
  元の位置関係に戻るということです。

しかし
実際には多くの実験の中で
五回対称や十回対称はみられていたのです。
多くの科学者がこれを常識的に考えて有り得ないので
見て見ぬ振りをを故意ではなくとも
してきました。
ところがシェヒトマン教授は違いました。
この五回対称や十回対称が有り得る空間構造であることを証明したのです。

不幸にもこの論文は
化学学会から馬鹿にされ
二年間も受理されませんでした。
ノーベル賞を二度受賞した
天才ポーリングは
彼の論文を「子供でもしない初歩的なミス」で馬鹿げたものだと一笑に付し
他の科学者もこぞってこの論文を批判しました。
しかし、シェヒトマン教授はこの批判にも一切揺るぎませんでした。

彼はアルミニウムとマンガンの合金で
最初に五回対称を観察したそうです。
先入観や常識に囚われた科学者なら
自分の実験ミスだと思うところです。
ましてや多くの人の批判を浴びれば
自説を曲げるか
研究を止めるのが普通だと思います。
しかし科学に対するシェヒトマン教授の
飽くなき探求心が
彼を真実へと導いたのでした。

このシェヒトマン教授の姿勢は正しく科学者の鏡です。
私も優秀な生徒には授業中何気なく
間違えた答えを提示することがあります。
「先生の言っていることは全て正しい」
と常識にとらわれていないかを確認するためです。
もし生徒がしっかりと自分の頭で考えて
私の話についてきていれば
その間違いには当然気付くはずなのです。
ちょっと意地悪なことかも知れませんが
教科書に書いてあること
先生が言うこと
どんな権威のある人が言うことでも
疑って自分で考えることを捨ててはいけません。
「自分で考える」大切さを
私は授業の中で強いメッセージとして伝えています。

彼の論文はその後様々な科学者の論文によって
裏付けられ2007年の論文(イッテルビウムとカドミウムの準結晶構造)
によって正さが決定づけられました。
詳細は省きますが
これには多くの日本人が貢献しています。

準結晶はもはや結晶のオマケではなく
むしろ準結晶の方に普遍性があります。

自然はランダムより対称性を好むようです。

今回のシェヒトマン教授の受賞で
改めて科学は疑って探究することが
大切だということを実感しました。

歴史的大発見!ヒッグス粒子発見の兆候か! [科学ネタ]

私のこのブログでも触れてきましたが
もしかしたらセルンでヒッグス粒子が発見されたかも
知れないという大ニュースが
昨晩NHKのニュースにとびこんできました。

物理学において存在を証明するためには
一般に99.9999%以上の精度がなければいけませんが
今回は99.9%の精度だそうです。

一般の社会では99.9%は非常に高く感じるかも
知れませんが
素粒子物理学の世界では実はそうでもありません。
ですから
まだまだ兆候に過ぎないのですが
その段階で私がブログに書きたくなるほどの
見つかれば世紀の大発見だということです。
質量、重力そして余剰次元など
様々な理論が完成する可能性を秘めています。
もしかしたら
宇宙というのは私の思うようなものである可能性が
更に高まる発見です。

仮にこれが間違いであってもそれはそれで
意義のあることですが
できればヒッグス粒子が発見されていて欲しいと
強く思います。

これからしばらく
この動向を見守りたいと思うと同時に
私の理論についても改めて
様々なケースを想定して考えていきたいです!!

一粒の奇跡 [科学ネタ]

最近、科学思想史の変遷を自分の頭の中で
振り返っています。

科学でも歴史的な見方をすることに
よって現在と自分自身が
よりよく見えてきます。

ときどき私は自分が何故生きているのかに
ついて悩みます。
正確に言うと多くの動植物を犠牲に生かされて
いるわけですが…

そんなときに
ふと歴史を眺めてみると
ヒントを思いつくことがあります。
それは科学思想史自体が人生の苦悩の歴史だからです。

思えば人間は沢山の間違いをしてきました。
天動説、地動説はどちらも間違えていましたし
勿論人間の姿をした唯一絶対の神などいるわけもなく
時間の概念を間違えていたために
タイムマシンなどという考えが生まれ
宇宙に生物はあまり存在しないと思われていたのが
宇宙のそこらじゅう(もちろん地球の近くではありませんが)に
ハビタブルゾーンがあり生命が存在していることや
宇宙は一つで20世紀に時空四次元という考え方が生まれましたが
実はこの世の中は五次元以上の余剰次元があり
宇宙自体も複数あるらしいとか…

人間の想像力は非常にたくましく
それが合っていたことも
間違えていたことも沢山あります。
私自身の宇宙に対する考え方も
100年後の未来からすれば未熟で間違いだらけでしょう。
しかし
その無数の間違いの中にほんの一滴の奇跡、真実があることを
願って
私は今日も科学的妄想を膨らませているのです。

古典を読む [科学ネタ]

古典を読むといっても
文学の話ではありません。

理系の古典の話です。

科学は日々進歩していきますから
教科書の内容もどんどん新しくなります。
昔はわからなかったことが
わかるようになり
それとともに教科書も新しく書き換えられていきます。
ですから古くなった昔の教科書というのは
理系の科目の場合
もはやいらないのでは
ないかと思われるかもしれませんが
決してそんなことはありません。

書いてある内容が古くても
斬新な切り口やアイデアで
さすがとおもわせる本は沢山あります。
そういう本を読むと
自分の中の感性が充電されるような気がします。
何かの新しいアイデアというものは
実は過去の違う組み合わせや
見方を変えたもの
ということがよくあります。

全く0からの新しい理論というのはほとんど
ありません。
ですから
何かのアイデアに困ったとき
私は古典を読み返してみることが
一番だと思います。
勿論その中に必ずしも新しいヒントがあるとは
限りませんが
自分の頭の中の今ある状況を整理する
というだけでも有意義だと思います。

歴史的名著を読みながら
コーヒーを飲む
これは最高の贅沢です。

宇宙の始まりがわかると [科学ネタ]

私は宇宙の始まりについて研究しています。
細かい内容は専門的なので省きますが
このブログでも概略程度のことは書いてきました。
重力の正体についても
私なりに答えを持っていますが
それが私が生きている間に証明されれば非常に嬉しいです。

今日はよく聞かれる質問について
答えたいと思います。
それは「宇宙の始まり」が分かったところで
私たちの生活にどんなプラスがあるのか?
ということです。

その答えは簡単です。
実用的にプラスになることは一切ありません。
宇宙の始まりなど知らなくても
普通に生きていくことが出来ます。
むしろその方が幸福なのかもしれません(笑)
経済にも何の影響も与えません。

ただ、私たちの世界観というものを
変え、発展させるということは
大いにあります。
これは非常に大きいことだと私は思います。

小学生の生徒から
今年はマヤ文明の記録によると世界の終わりの年
ですが、地球は今年滅亡するのですか?
と質問されたことがあります。
勿論、こんなことは私にはよくわかりません。
地球が突如滅亡する可能性は常にほんの少しはあるからです。
ただ、一つだけ言えることは
マヤ文明の予言も
もはや外れたノストラダムスの予言も
その他過去の人類の予言等は
必然性を持って当たるということは
決してないということです。

それは何故かというと
20世紀半ばまで
根本的な宇宙の理解、いや地球の理解でさえ
出来ていなかったからです。
マヤ文明の人は時空が四次元以上もあり
宇宙が実は沢山あることなど知るよしもありませんでした。
もっと初歩的なこと
宇宙が膨張し続けていることも
地球が太陽の周りをまわり
更に太陽が銀河のまわりを
まわっていることさえ知りませんでした。
そのような完全に間違った世界観の中で予言されたものが
正しいはずはありません。
最低限、天気の仕組みの理解がなければ
天気予報はあたるはずがありません。
(それでも外れるのですが…)

昔の人は残念ながら
その時代のprimitiveな世界観でしか
様々なことを考えることができませんでした。
ですからよく分からないものには
神とか霊とかとりあえず名前をつけて
理解はできなくても
実在として考えることで済ませてきました。

ギリシャ時代の神話
星座なんてかなりの無理があります。
ギリシャ時代には宇宙は平面で空に張り付いているものだと
思われていたので
星と星を結んで星座を作って
それにまつわる面白いお話しを作っていました。
ところが現在の我々にはわかるように
星は平面上にはありません。
あの線の引き方は
奥行きを考えるとかなり無理があります。
実際はある星はかなり手前に
ある星はずっと奥にあり
その間に星は無数にあるんです。
それを線でひいてできたものに意味などあるはずがありません。
線の引き方が不自然過ぎます。
それでも昔はそれは分からなかったので仕方がありません。
宇宙に対しての理解が不十分だったのです。

様々な宗教で語られる
人間の姿をした神様にも同じことが言えます。
長い地球の歴史45億年の中
現在のわれわれと同じ種類の人類が生まれたのはどんなに
長く見積もっても50~100万年前のことです。
ほんのつい最近です。
地球には今まで無数の動植物が長く存在していて
人間はつい最近猿から進化してちょこっと現れただけです。
それなのに神様が人間の姿をしているなんていう
都合のいいことは絶対にありません。
それだったらゴキブリとか微生物の姿をしている可能性の方が
はるかに高いと思います。
これも実は地球の年齢など良く分からず
地球ができてからほどなくして人類が現れたと考えられていた
世界観の中で想像されたことなので仕方のないことだと思います。
勿論神様が人間の姿をしているなどということは絶対にありません。

宇宙には数多の生物がいます。
20世紀に思われていたよりも
遥かに生物がいることがわかってきています。
宇宙には地球のような生物が住める星が最低でも
数兆個のオーダーであり
そこには様々な形で生物がいます。
知的生命体も必ずいます。
その根拠は現に我々が地球に存在しているからです。
地球の私たちが宇宙で唯一無二の存在である
確率などほぼありません。
しかも最近では我々が考えている宇宙と言うのは一つでは
ないことが分かってきました。
そう考えると生き物はそれはそれは沢山いて
地球というちっぽけな一つの星に
全知全能の神様や
その生まれ変わりの人間が存在する
存在した
などということがいかに
おかしなことかがわかります。

こうやって人類の宇宙に対する理解が深まると
ともに、より正確な世界像というもの出来てきます。
そういう意味では宇宙の始まりを理解することは
人類の役にたっているといえるのではないでしょうか。
私たちの考えている
私の考えている
現在の世界観というのも
真実ではなく必ず書き換えらる運命にあるとおもいます。

注)
私はある特定の宗教を否定しているわけではありません。
宗教は精神文化です。
人生は辛いことが多いので
何かを信じないと
人は生きていけないという面も大いにあります。
以前、ブログに書きましたが
神という存在を仮定することによって
道徳的に正しく生きられる可能性もあります。
ただ、それはあくまでも文化であって現実ではありません。
宗教が行き過ぎて戦争やテロで多くの人がなくなっています。
そういう人々にはしっかりと
科学を学んで欲しいです。
存在しない神様のために、たった一度の人生を投げ出したり
たった一度の他人の人生を奪うことが
いかに愚かであるかがわかるからです。


光速を超えるニュートリノ発見か? [科学ネタ]

昨日
新聞に光速を超えるニュートリノが発見されたとの
ニュースが新聞に掲載されました。

これが本当であれば
現代物理学の概念を根底から覆す大発見です。

以前にもブログで書きました。
質量がゼロのものを加速したものが
最高速でそれは電磁波の速度
つまり光速の秒速30万kmです。
これは相対性理論の前提にもなっています。

ですから光速を超えるものがあるとすれば
マイナスの質量を持つことになり
相対性理論が誤りだということになり
タイムマシンを作ることが理論上可能になります。
それどころか時間の概念自体を
見直さなければならないと思います。

ただ……
私はこの実験結果に懐疑的です。
それは小柴さんがノーベル賞を取られた
カミオカンデのニュートリノの捕獲の際に
今回の実験結果が正しければ
超新星爆発が起きてから
光よりもニュートリノの方が一年近く早く地球に
到達していなければおかしいからです。
現実にはほぼ同時に観測されました。
それに今回の実験は
ある二点を光速とニュートリノでそれぞれどのくらい
時間がかかるかを調べる実験ですが
実は厳密に言うと
時間を計る時計を合わせるというのは非常に難しいのです。
現在の技術ではどうしても無理があります。
私には今回の実験はその誤差内の違いに過ぎないように
思われます。

このような話は今までも沢山ありました。
それはその都度否定されてきました。
相対性理論が正しいことはこの100年の無数の実験で
確認されてきました。

私の様々な理論も相対性理論なくしては
話がはじまりませんが
もし
相対性理論が間違えていて
光速より速いものがあったら
どのような世界観になるか
どのような理論になるかというのは
これから色々と考えてみたいと思います。
それはそれで楽しいものです。
この宇宙の仕組みがどのようになっているのか
それを私は日夜考えています。

睡眠と覚醒の境界 [科学ネタ]

確か四月下旬くらいの論文だったと思いますが
natureに載っていた面白い論文について
今日は書いてみたいと思います。

突然ですが
「今、起きていますか?」
この質問
当然
私のブログを読んでくださっている
今は
起きていると多くの人がお思いになると
思われますが
そうとも限らないのです。
退屈な内容なので
もしかしたら
睡眠状態に近い状態で
このブログを読んでいるのかもしれません(笑)
今日はそんなお話です。

実は睡眠状態と覚醒状態の厳密な区別は
非常に難しいということが最近わかってきました。
なぜなら
脳は「部分的に」睡眠するからです。
先ほど書いた論文では
起きているように見えるラットで
大脳皮質のある領域のニューロンが一時的に
「オフライン」状態になることが報告されています。
しかもこの状態はノンレム睡眠と似た状態なのです。
起きているラットの脳の局所的な睡眠状態が
一時的に随所で見られました。
論文ではこれについてももう少し細かい実験をしてフォロー
していますが、ここでは省略します。

実は私たちは覚醒状態のときも
脳の部分部分は睡眠しています。
ニューロンは常に居眠りをしているのです。
ですから睡眠不足になると
起きてはいるつもりでも部分部分のニューロンはお休みしていて
判断力が落ちたりミスをしたりします。

今、こうしてブログを書いている私は
自分ではバッチリ覚醒しているつもりなのですが
確実に脳のどこかは居眠りをしています。
その割合が増えてくると
眠くなります。
睡眠状態になります。
ただ、その睡眠状態でも
脳の全てが睡眠をしているわけではありません。
部分的には覚醒しています。
覚醒状態と睡眠状態は非常に曖昧で実ははっきりとした
境界線がないことがわかってきました。

金縛りや夢遊病、時には覚醒状態でも睡眠をして
夢を見ているために
おかしな小人や幽霊が見えたりもします。
寝ていても夢が見られるのもそのせいです。

以前テレビで25年間寝ていない人が特集されていました。
そのテレビ番組では
そんな話は嘘に決まっているということで
その方に一週間24時間つきっきりでカメラを撮影して
眠る瞬間をとらえようとしました。
しかし
本当に一週間寝ていませんでした。
朝から昼まで畑仕事をして
ご飯も沢山食べ
夜中は眠れないので警備のアルバイトをしているんです!
眠らないのになぜこんなに働けるのか?
私ならお腹いっぱいになったらスヤスヤ寝てしまします。
これは不思議です。

そこでそのテレビでは丸一日脳波を調べることにしました。
そうすると脳波を調べると
起きているように見えても実はちゃんと
脳の部分部分が居眠りしていることが分かりました。
部分部分で寝て一日のうち五時間くらいの睡眠は
とれているそうです。

この方取材したところ
最初に眠らなくなったきっかけは
激しい腰痛だそうです。
寝ようとしても激しい腰痛に見舞われ
眠れず、睡眠薬も効かなかったそうです。
それから寝るのを諦めて今に至るそうです。
当初は医者に通っても
本当にずっと寝ていないということを
信じてもらえずに
精神的な治療を受けたそうです。

ガガーン[がく~(落胆した顔)]
私の椎間板ヘルニアで座れないというのも
そのうち何か変わった現象を引き起こすかもしれません。
私は眠りたいです。
痛くならないように気をつけたいと思います。

このように実は私たちは自分でも

覚醒状態なのか睡眠状態なのかは
認識できません。
私たちが覚醒していると思っても
実際は脳の部分部分は居眠りをしています。
その居眠りのしかたや
場所によって様々な影響がでてくるのです。

ウォーターオーブンについて [科学ネタ]

今日は何を書こうかしばらくパソコンの前で
悩んでいました。
…というのも
暑いこと以外何も思いつかないからです(笑)

暑くなった打ち水
ということで
真昼に打ち水をしても意味がないことは
昨年かその前かに
ブログで書いたような気がします。

それではその逆が利用されている例として
ウォーターオーブンについて書いてみます。

ウォーターオーブンというのは名前の通り
正しく水で焼くオーブンで
もう結構前から商品化されています。
確かシャープさんの「ヘルシオ」が最初じゃないでしょうか。
水で焼くため、
普通のオーブンに比べて油脂や塩分を削減でき、ビタミンCの酸化を抑える
効果があります。
「ヘルシオ」というのはヘルシーと減る塩をかけたダジャレなんでしょうか?
な~んて
これは冗談です。
間違えていたらシャープさんごめんない。

数か月前ですが
水の沸点が100℃なのになぜ水でものが焼けるんですか?
と生徒に質問されたことがあります。

これは打ち水の逆です。
水の気化熱というのは非常に大きく
打ち水は水が水蒸気になる際に
空気中の熱を奪うことを利用して行うものですが
これを逆に水蒸気から水にしてやれば
大きな熱を食品に与えられるはずです。
その熱を使って料理をするのがウォーターオーブンです。

ウォーターオーブンの最大の特長は
乾燥と急速加熱にありますが
その仕組みはこうです。

水が100℃になると水蒸気になりますが
それを更に加熱して300℃くらいの「加熱水蒸気」を
つくりそれを食品に吹きかけます。
そうすると加熱水蒸気は高温の気体なので
分子の密度が少なく
食品からその隙間を埋めるかのように水が蒸発します。
そうすると食品が乾燥します。
また、食品は加熱水蒸気に比べて著しく温度が低いため
食品に触れた加熱水蒸気は水に戻り
そのときに大量に熱をだします。
これは普通の熱風オーブンよりも
かなりスピードが速いために
急速加熱が可能なんです。

たかが水ですが
されど水です。
水は私たちの生活に当たり前のようにありますが
実は水は科学的にみると特異な存在です。
その水が大量にあったからこそ
私たち生命は生まれ育まれたのです。
火のないところに煙はたたないのと同様
水のないところに高度な生物はいません。

この加熱水蒸気も
水蒸気だから所詮
水だと思っていると
大変なことになるので
お気をつけください。

加熱した水蒸気では物がこげますし
マッチに火がつきます。
温度によっては大変なエネルギーを持ちます。
逆にそのパワーを有効利用したものがウォーターオーブンなのです。

私の生徒がそんな質問をしてくるということは
お家にウォーターオーブンがあるのでしょうか
羨ましいです[わーい(嬉しい顔)](笑)

太陽の黒点周期に注目です [科学ネタ]

昨日は暑かったですね。
今日は夏至ですし
いよいよ夏本番です。
被災地の方も大変ですし
今年は昨年のような酷暑にならないで欲しいです。

今日は太陽の黒点周期に現在異常が起きていることについて
かいてみたいと思います。
小学生の理科の授業で私も教えていますが
太陽の黒点が増えるのには周期があり
それを黒点周期と言って
11年おきに起こることが知られています。
黒点が多い時期は太陽が活発に働いている時期です。
これが今狂っています。
もう11年は過ぎているのにピークがきません。
おそらく14年くらいでピークがきます。

このようなことは過去にも起きていることが
屋久杉の年輪に含まれる放射性炭素分析によって
わっかています。
黒点周期が11年から伸びて
14年が三回くらい続いた後に
グッと地球寒冷化するんです。
これは今言われている地球温暖化とは逆のことが起こるんです。
寒冷期は70年から100年くらい続き
最近では1700年代にこの現象がありました。
イギリスのテムズ川が凍っていたほどです。
この現象が起こると
平均気温が3℃~5℃は下がると言われています。
ですから
今、黒点周期の変化に世界中が注目しています。

ただ
寒冷化が始まるのは
おそらく早くても50年くらいは先で
地球温暖化との相殺でどの程度気温が下がるかは
わかりません。
50年も経てば
勿論
このブログは終わっているでしょうし
私もおそらくこの世にいませんが(笑)

それではなぜ黒点が増えないと寒冷化が起きるのでしょうか?

仕組みはこうです。
黒点が増えず、太陽が活発に働かなくても
実は地球に降りそそぐ太陽光の量はほとんど変わらないです。
ところが黒点が減る時期は
太陽の電磁波が弱くなります。
私たちは太陽の電磁波というバリアによって
宇宙から降り注ぐ宇宙線という放射線から守られています。
地球も磁気によってバリアを作っています。

黒点の活動が弱くなると
この太陽の電磁気バリアが弱くなるんです。
そうすると太陽系外部から宇宙線が
沢山降り注ぐようになります。

その宇宙線が実は雲を作る核になりうることが
2000年代になって証明されました。
これは非常に大きな発見です[ひらめき]
地球に降り注ぐ宇宙線が増えれば
雲を作る核が増えますので
沢山雲が出来ることになります。
そうすると太陽の働きの弱まりによる
太陽光の量の減少自体は0.15%くらいしですが
雲の量が増えるせいで
太陽の光があまり届かなくなります。
そしてこの雲の多さが地球を寒冷化します。

世間的には
地球温暖化問題で騒がれていますが
天文学会では逆に地球の寒冷化を招く
黒点周期の延びに注目しているところは
対照的で面白いですね。
寒冷化が起きても
それを生きて見られないのは残念ですが…

高いマグニチュードはすぐに正確にわかりません [科学ネタ]

今回の東日本大地震では津波で
大きな被害がでました。
実際に津波で多くの被害が出た理由は
あの地域にできた世界最高峰の防波堤への
過信や津波への慣れという問題がありました。

しかし
実は科学技術の面からも
問題があったということを
今日は指摘しておきたいと思います。
これを読まれた方が今後の地震について
いろいろ考えて頂ければ幸いです。

まずマグニチュードですが
0.2違うと2倍エネルギーが増します。
ですから
マグニチュードが1違うと0.2×5=1なので
2×2×2×2×2=32倍エネルギーが増します。
ですからマグニチュード7と9では2を十回かけた1024倍
エネルギーが違います。
感覚的にマグニチュードが1違っても
大した差はないと思われる方もいるかもしれませんが
その感覚は修正が必要です。

これを前提として
マグニチュードが地震後どのように算出されているか
ということが今回のブログのテーマです。

まず地震が起きた直後に
震源から100㌔離れた地震計の針が揺れた
最大値からマグニチュードがだされます。
実はこれは正確ではありません
暫定的なもので
低いマグニチュードはそれなりに正確にでるのですが
マグニチュード7以上は怪しくなり
マグニチュード8.5を超えると原理的に計れなくなります。

そこでどうしているかというと
同時に巨大地震でも
より正確に計れるモーメントマグニチュードが使われています。
モーメントマグニチュードは
断層の長さとずれた量などで計算するもので
国際的に広く使われています。
しかし
このモーメントマグニチュードは 計算するのに二時間以上はかかってしまいます

今回の地震でいうと
東日本大地震発生後、気象庁はマグニチュード7.9と発表しましたが
2時間45分後にモーメントマグニチュードにより8.8に訂正
更に二日後にデータを改めて丁寧に解析し
マグニチュードが9.0に訂正されました。
その煽りを受け私の過去のブログに記事にはマグニチュード8.8と
書いてあるものがあります(笑)

簡単に
マグニチュード7.9→9.0に訂正といいますが
最初に書いたようにこれはエネルギーでいうと50倍近く
違います[exclamation×2]
このことによって
最初にでたマグニチュード7.9で想定される
津波警報が3mと出てしまいました[がく~(落胆した顔)]
元々この地域の防波堤はマグニチュード7台には
対応できることが知られていて
津波警報も3mなら……
という気持ちですぐに避難せずに逃げ遅れた方も
いるのではないでしょうか?

津波は数十分できますが 正確なマグニチュードが分かるには 二時間以上かかります!

高い値のマグニチュードはすぐには正確に出せないのだと
いうことを知り
これからの参考にして頂きたいです。

地震が起きてマグニチュードが7を超える値が
気象庁から発表された場合
実際は遥かにおおきな地震であることもあります。
海の近くにいた場合はダッシュで高台に
逃げてください。
最悪発表の1000倍のエネルギーを持つ
地震であることもあるのです。

(オマケ)
昨日書いた内容もそうですが
あまり変な部分で科学を過信し過ぎないでください。
わからないものはわかならいんです。
これは私が物理マニアだから分かりますが
人間の分かる部分はほんのごく一部
しかも
それは確定したものではなくて
未来の科学によって書き換えられる可能性のあるものです。

放射線量は外部被曝、内部被曝で
特に低線量では健康に対する影響は
よくわかりません。
よくわからないので
安全だ安全だという人もいれば
危険だ危険だという人もいるのです。
どちらも確かめようがありません。
ですから両方の本が売れます。

人体実験はできませんし
自然に事故等で被曝されたかたの
追跡調査をするしかありません。
(広島長崎かチェルノブイリか
ビキニ環礁等の核実験などです)
その調査も昨日書いたように
仮に癌になった場合
それが何が原因なのかは
特定できません。
喫煙か、アルコールか、それとも大きなストレスか
他の食べ物か、放射線なのか…
癌が私はこうしてなりましたと
しゃべってくれればいいのですが(笑)
特に低線量被曝の場合
癌になるリスクの
割合が小さすぎてどこまでが放射線の影響
なのかは分かりません。
ですから
気にしすぎる方が身体によくありません。

あっ[exclamation]
あと
今放射線を計る
ガイガーカウンターが売れているようですが
本当に福島第一原発の近くに住んでいる人で心配な方以外必要ありません。
中にはバッタものがありますので気を付けてください。
本当はガイガーカウンターは一年に一度調整が必要です。
(ピアノの調律のようなものです)
そうしないと正確な値はわかりません。
それは研究機関でないと難しいので
一般の方が買う必要はないと私は思います。
買っても正確な値かどうかは甚だ疑問だからです。

IH調理器の仕組み [科学ネタ]

昨日
物理の授業で渦電流のお話をしていました。
そこでIH調理器の仕組みについて
お話ししたのですが
生徒が「そんな仕組みは知りませんでした」
といっていましたので
実はあまりIH調理器が何故温まるか
知られていないのではないかと思い
今日はブログで書いてみることにしました。

IH調理器は見た目は平らなプレート状で
フライパンなどを置く前に手で触っても熱くないのに
炎もでないのに
なぜ温まるのか
不思議に思った方もいると思います。

この原理としては基本的に三段階でできているものが
ほとんどです。
①IH調理器のプレートの下にコイルが入っていて
 そこに交流電流を流します。
 そうすると電磁誘導で周期的にS極とN極の向きが
 入れ替わる交流磁場が発生します。
②その交流磁場が発生した上に金属の鍋等を置くと
交流磁場の作用で電磁誘導が起こり
 鍋等に渦電流という電流が流れます。
③渦上の電流は交流磁場の変化に応じて
向きを変えながら流れ続けます。
そうすると電子が鍋の金属イオンにぶつかって
金属イオンをブルブル振動させます。
それがジュール熱となりモノを温めるのです。

おかしな例えですが
朝のラッシュ時
改札口の混雑の中を激しく向きを変えて
歩いていると
人にボコボコぶつかると思います。
その衝撃が熱となって
物を温めるんです。

あっ[あせあせ(飛び散る汗)]
これは決して
実際にやらないでください(笑)

昨日の問題の答え [科学ネタ]

昨日の問題をもう一度載せておきます。
(問題)
お風呂の栓などで水を抜くと渦ができます。
そのときの渦はどちら回りにできるでしょうか?
①右回り(clockwise)
②左回り(counterclockwise)
③その時々で変わる

(解答)
この答えは②と言いたいところですが
実際は③です。
確かに台風などを見れば北半球では左回り
南半球では右回りで
これは地球が自転していることによって
コリオリの力が生じているからです。
ここまでは合っています。
今回取り上げた問題ですが
よく物理クイズなどの本に答えが②で載っていますが
果たしてそれを実際に実験してみた人はどれくらいいるでしょうか?
(私が今回実験してみたら
我が家の洗面所では五回中四回は右回りでした。)

…というのも
実はコリオリの力が運動の中で大きな影響力を示すのは
台風のように巨大で
空気中で比較的摩擦等の影響を受けにくい場合に限ります。
確かに洗面所の水やお風呂にもコリオリの力は働くのですが
それは本当に小さすぎる力で渦を右回りにしたり
左回りにしたりできるものではありません。
それよりも洗面所の形状や家の傾き
その時々の状態の方がはるかに影響が大きいです。
これらが仮にすべてフラットだとしても
洗面所の目に見えないくらいの凹凸の方が
コリオリの力よりもはるかに大きな影響を及ぼします。
ですから正解は③になります。

今回は意地悪な問題でしたが
この問題を通して私が伝えたかったことは
(特に学生に伝えたいことですが)
教科書や本に書いてあることを鵜呑みにしないで
欲しいということです。
物理の教科書にはおかしなことが沢山書いてあります。
フックの法則など実験してもほとんど成り立ちません。
他のものも真空だったり、様々な理想状態を仮定しています。
ですから、その教科書に書いてあることが現実に
そのまま起こることはまずなく
様々な影響を考えて
今回の現実の事象の場合
どのファクターが一番影響が大きいかを
吟味しなければ
とても物理学的とは言えません。
数学のような作り上げた理想の世界というのはありません。
勿論、これはその理論に意味がないということではなく
現実に理論を返すときは
どの程度当て嵌まるかというのを
評価しないと意味がないということなのです。

私は今回の原発事故で
様々な科学者が実は教科書上の話しか
できないことに愕然としました。
原発設計者の方がテレビで
最悪の想定としてチャイナシンドロームのようなことが
起こるとおっしゃっていましたが
それは正しく教科書上の話で
それが起こる可能性は誰も何もしない状態でも
天文学的な、普通の人は起きないといってもいいくらいの確率であり
しかも現実には水で冷やしたり、何かしらのことはするわけですから
それを最悪の想定とするのはどうか?
と私は思います。
勿論理論上確率がゼロではないのですが
それはかなりの理想状態においてです。
科学者でも、というか科学者にありがちなことですが
その辺の評価のバランスが崩れている方が多く
専門家になればなるほど教科書を信奉する傾向にあります。

私たちは現実の世界に生きているのであって
常に総合的な判断をしなければなりません。
それはリスク管理の記事で書いた通りです。



身近な物理クイズ [科学ネタ]

今日は久しぶりに物理クイズを書いてみたいと思います。
有名過ぎるネタかも知れませんが
ご存知ない方もいるかと思いますので
疑問に思う方は是非実験してみてください。
コリオリの力の問題です。

(問題)
お風呂の栓などで水を抜くと渦ができます。
そのときの渦はどちら回りにできるでしょうか?
①右回り(clockwise)
②左回り(counterclockwise)
③その時々で変わる

今こそ磨く、リスク管理能力 その5 [科学ネタ]

四回にわたって長々とリスク管理について書いてきました。
毎日、同じ話題で正直こりごりだという方もおられると思いますが
今日までお付き合いください。

大体リスク管理の序章としては書きたいことは書いたのですが
最後に精神的な問題は非常に大きいということを
改めて書かせて頂きたいと思います。
勿論、リスク管理についても触れながらですが。

以前にチェルノブイリで精神的なストレスに起因した
疾病の報告が多数みられたとという話を書きましたが
これが私は本当に心配です。
詳しい情報はわかりませんが先日千葉県でも
この震災か原発か風評被害が原因かわかりませんが
心中される方がでました。
福島原発はもう大きな爆発等は回避できたと思いますが
長期戦は必至なので、精神的に参ってしまう方も
いるのではないかと非常に心配しています。
どうしても高濃度の放射線下で作業をするために時間がかかってしまいます。
これからロボットなど様々な工夫をするとは思いますが
スリーマイル島で完全に終息するまでに6年かかったことから
それ以上の期間は覚悟しておくのが当然だと思います。
ただ、とにかくそれより早く放射性物質をあまり大量に外に
出さないような工夫をしなければなりません。

先日ついにレベル7でチェルノブイリと同じ事故に認定されてしまいました。
こんなことを言ったら怒られてしまうかもしれませんが
私はレベルは6でいいと思います。
世間的には三月の時点でレベル7だったはずだというのが
大勢なのはわかっていますが
臨界事故かつ外部被曝で30人弱が亡くなり、放射性放出量が10倍の
チェルノブイリと並列にならべる事故だとは思えないからです。
ただ、放射性物質の閉じ込めがこれだけ
長くできていないのでレベル7を主張する方がいるのも勿論理解できますが
私は段階的に上げればいいと思いますので
とりあえずレベル6くらいで良かった思います。
広島、長崎と共に福島も世界的に有名になってしまいました[もうやだ~(悲しい顔)]

早く閉じ込めをしないと
元もと原発近辺に住んでいる人は
かなり長い避難生活を強いられ
精神的な影響は大きくなると思われるからです。
私はリスク管理の観点から東京で避難する必要は一切ないと書いてきましたが
精神的な問題がある方は別です。
あまり不安な場合は気持ちが落ち着くまでどんどん
退避したほうがいいと思います。

原発から近くに住んでいる人で思い出しましたが
原発から5㌔地点で避難をしたくはない、
85歳を越える老夫婦がいました。
この人達を自衛隊が説得して強制的に避難させましたが
これは非常に難しい問題です。
放射性物質をどのくらいに評価するかによってとるべき行動は変わってくると思います。
仮に基準値を大きく超える放射線を間接的に浴び続けても
おそらく身体に影響がでるまでに
一番早い白血病で10年以上、固形の癌だと
20~30年のオーダーでかかりますから、
寿命と比べてどうかということです。
高齢になって住み慣れた土地を離れて
避難所を転々とする方が大きなストレスで健康に悪影響がでる可能性もありますし…
ストレスの感じ方には
個人差があるのでわかりませんが、
どちらかを選択するのは最終的に個人的な問題、
その人の哲学的な問題です。
周りの人はそのリスクを考慮してアドバイスをするしかないんです。
ただ、強制退避の中にこのような
リスクに関する比較がなければそれは大問題だと思います。

今回の記事は五回にも渡り
かなり長くなってしまいましたが、
この震災を教訓にして、
大衆に流されることなくしっかりと自分で考え
自分でリスクを管理する能力が民主主義国家では必須です。
私もそのような
考えられる国民を一人一人育てるという作業を
家庭教師をとおしてやっていきたいと思います。

まだまだ書き足りない気もします(笑)が
流石に連日同じようなテーマでかいてしまいましたの
この辺でこの話題はやめておきます。
また、何かの機会で他の話題について書いてみたいと思います。
(ただ、明日またちょっと関連したまとめを書きます。)
皆で復興に向けて前向きに頑張っていきましょう[パンチ]
(未来へと続く)

今こそ磨く、リスク管理能力 その4 [科学ネタ]

今日は話はリスク管理から少し逸れますが
全ては量の問題だということを強調しておきたいと思います。

放射線が体に悪い悪い言われていますが
何事もそうですが全ては量の問題です。

私たち人類は大量の放射線を浴びて進化をしてきました。
ですから、体の中に取りこまれても浴びても
大量でなければ基本的には問題は起きません。
それくらい放射線に強い生物です。
過度の心配は逆にそちらの方が
ストレスで体によくありません。

頭痛薬だと言ってブドウ糖やでんぷんの塊を飲ませても
治ってしまうプラセボ効果からもわかるように
人間の精神的な力というのは大きく
人間は精神的なストレスに非常に弱い生き物です。

そもそも全ては量の問題で
どんなものでも過剰に取れば毒になりますし
適量であれば体に必要なものです。
また人間の体は不思議でよくわからないことが沢山あります。

例えば魚介類には沢山のメチル水銀が含まれています。
欧米ではマグロや魚介類に摂取規制値があるのはご存知でしょうか?
日本でも妊婦さんはマグロなどの魚介類やイルカ、クジラなどは
過剰に摂取しないように厚生労働省が注意を喚起しています。
ところが不思議なことに
マグロの消費量世界一の日本で頻繁に魚を食べていても
メチル水銀の被害は稀です。
ですから、私たちは魚は有毒だから一年間の量はこれくらいにしよう
などとは思わないはずです。
むしろ、肉より魚を食べる方が健康的だとさえ言われています。
漁師の人は沢山魚を食べますし
昔からイルカやクジラを肉の代わりに食べている地域もありました。
私は違いますが給食にクジラの肉が出ていた世代もあると思います。
その世代が特別に中枢神経に異常をきたした
人が多いという話など聞いたこともありません。

なぜ、メチル水銀を沢山とっても日本は長寿の国なのでしょうか?
これには諸説ありますが、おそらく一度の大量のメチル水銀をとらなければ
私たちの体の中には遺伝的にメチル水銀をうまく体に排出できる機能があるのだと
思います。

他にも例えばカレー事件で有名になったヒ素ですが
ヒ素は毒でもありますが少量の低毒性の化合物であれば体に必要です。
イギリスではヒ素を多く含む「ヒジキ」に摂取規制値があるのを
ご存知でしょうか?
他にも私の好きな牡蠣やエビにも低毒性のヒ素化合物は多く含まれています。
海老フライを食べるときにヒ素がたまるから…
なんて普通は心配しませんよね。

ところが今の放射性物質の出荷停止騒ぎなどは
これと同じくらいの話なんです。
大量に毎日毎日継続して取ったら危険だというふうに
言われていますが
それはなんでもそうです。
マグロだって毎日三食継続して食べ続けたら
体に有害です。

他にも体に毒である金属が少量ならば必要であったり
薬にまでなっている例が沢山あります。
私たちの体には試験管やマウスの実験ではわかり得ない
不思議が沢山あり
それは人体実験ができませんので
過去の被害等に学んでいく他はないのです。

ここで体に必要な金属の例をいくつか書いておきます。
勿論これらは必要以上にとると毒になりますので
よっぽどの不足する原因がない限りは
サプリメントなどで補給する必要はありません。

鉄 …酸素の運搬を助け、不足すると貧血や
    忘れやすく、疲れやすくなります。
亜鉛 … タンパク質の合成に関与していて不足すると
      皮膚障害、味覚障害、脱毛、妊娠異常が起こります。
クロム… 糖代謝、脂質代謝に必須で不足すると糖尿病、高脂血症
      が起こります。
銅 … 鉄の吸収を助けます。不足すると貧血、骨折、白血球減少が
    が起こります。
他にもマンガン、コバルト、モリブデン、マグネシウムなど
沢山の必要な金属があります。
また薬にも
鉄 亜鉛 金 プラチナ
コバルト クロム
バナジウム ビスマス アルミニウム
マグネシウム 水銀 などが使われています。

放射性物質は人間が作り出した全く未知の物質ではありません。
進化の過程でずっと浴び続けてきたものです。
ですから少々多めに浴びたり、体に摂取してもなんともありません。

それより私が危険だと思うことは
人間が自分の頭で考えなくなることです。
国際的な基準値では~と
最近よく言われますがそれを鵜呑みにするのもどうかと思います。
まず私たちが知るべきはその基準値なるものが
どのように算出されたもので
どのような科学的根拠に基づいて作られているか
ということです。
私は科学病なので(笑)
すぐにその推定が数学的に妥当かどうかなどと
考えたくなってしまいます。
そうすると根拠がいい加減でがっかりしたり、また逆に
しっかりとした推定で感心させられたりすることがあります。
勿論個々人の興味の幅で
そんなに細かく調べる必要はありませんが
第一歩として
これらについて疑問を感じることが非常に大切です。
情報の根拠を知った上で妥当と思えるなら
自らのリスク管理においてそれに従うべきだと思います。

誰かが言ったからとか国際的に決められているから
とかいう
情報だけで行動するのは本当に危険だと思います。
風評被害など単なるうわさ話です。
おそらくこのようなことは今後も続くと思います。
原始時代から何も変わっていません。

規制値、基準値という言葉はもっともらしい顔をしていますので
本当に注意が必要です。
例えば日本人が海産資源を取り過ぎていることや
イルカやクジラを捕まえることに反対しようと思えば
政治的に
欧米のメチル水銀の規制値などを持ち出して
メチル水銀が如何に危険かを大々的に喧伝し
「魚は危険だ」という話を作り上げることも容易なわけです。
メチル水銀が有毒であることは誰でも知っているからです。

でも、そういうときには
立ち止まって考えてみてください。
私たちは世界の中でも大量の魚介類を摂取してきました。
それなのに欧米よりも平均寿命は遥かに長いです。
最近は食の欧米化が進み、逆に寿命は縮むのではないかと
言われているくらいです。
これはどういうことかと。
確かにメチル水銀は理論上有毒です。
ただそれは試験管での話で
おそらく低量であれば、体から排出されるなり
他の化学物質の影響があったり
同時に摂取されるタンパク質の影響があったり
様々な可能性によって
理由はよくわかりませんが
私たち日本人は沢山の魚を食べてもなんともないのです。
実験室のマウスの実験も
何億人という人体実験の結果には到底及びません。

今回の放射性物質騒ぎは様々なことを教えてくれていると思います。
これらをすべて教訓にして
次に同じことが起きないようにするのが
大切だと私は思います。
(明日まで続く)

今こそ磨く、リスク管理能力 その3 [科学ネタ]

今日は昨日のダイオキシンにつづいて
狂牛病騒ぎについて書いてみたいと思います。

狂牛病というのも大変問題になり
風評被害によって吉野家が豚丼に切り替えたり、
牛肉の輸入を控えたりもしました。

これもまたリスク管理としておかしな話です。

狂牛病は原因がはっきりしていますし、危険部位も明らかです。
それでいて牛肉を食べない、
もしくは輸入をしないというのは私にはよく理解できません。

狂牛病にかかった牛の牛肉を食べて
狂牛病を発症した人は一人もいないからです。

おかしな話ですが、狂牛病にかかるためには
その牛の脳、目、脊髄、稀に小腸の一部を食べなければなりません。
しかも食べたら確実に発症するわけではなく、
イギリスでは少なく見積もっても推定1000万人を超える人が
危険部位を食べても、それで狂牛病に感染されたかたは137人でした。
確率でいうと0.01%です。

狂牛病は簡単に言うと共食いで起こります。
これははっきりしていますので、
各牧場で牛骨粉をやらないようにすれば済む話です。
この件で日本はアメリカに全頭検査をしろと迫りました。
ところがそれはアメリカからすると非常に滑稽なリスク管理です。
ある牧場牛骨粉が与えられているか調べるのに
全頭検査など必要ないからです。
ある牧場である牛には牛骨粉、
ある牛には普通の餌などという
非合理的な方法をするはずがないからです。
それは余計にコストがかかり
牛骨粉を使うメリットが何もなくなるからです。

今回の福島原発の事故で
私たち個人個人のリスク管理を見直さなければならない
と私は思いました。
あまりにもおかしな風評被害が広く蔓延しているからです。
これが文明国家かと疑われてもおかしくないほどです。
(世界に流れているデマはもっとひどいものですが)
私たちは一般に身近にあるもの昔からあるものへの
リスク評価が甘くなり、
馴染みのないものに対する
リスク評価は恐怖によって過大評価になります。

以前に書きましたが
車を運転する人も歩行者も
毎年100万人を超える交通事故があり、
毎年1万人も亡くなります。
これは狂牛病の牛の危険部位を食べたときの
狂牛病発症率0.01%と同じです。

それなのに車を世の中からなくそうという人はいません。
自分が注意していても相手の不注意や飲酒運転で
事故が起こるにも関わらず、
車の排斥運動など聞いたことがありません。

実際に狂牛病の方が原因ははっきりしていますし、
そもそも狂牛病の牛は流通はしませんし、
仮に食べるとしても危険部位を食べなければいいだけです。
それでリスクは遥かに小さくできます。
それに対して
交通事故のリスクはそう簡単に落とせないことは明らかです。
交通事故は、放射線と違って
健康被害などではなく0.01%の人が確実に亡くなっているのです。

このリスク管理に関するアンバランスは科学的にはとても理解できません。

昨日今日とダイオキシンは人には無害で
狂牛病は危険部位を食べる以外は何も気にする
必要はないと書いてきました。
ただ誤解して頂きたくないのは
私は何でも安全だといっているわけではありません。
本当に危険な時は危険だと言いますし
その場合は逃げるなりなんなりすべきです。
どのくらいの危険があるのかを推定し
報道されている内容等は果たして科学的に
信頼するに値するものかを考え
しっかりとしたリスク管理が個々でできないと
本当の危険とは何かが分からなくなってしまうことを
案じているんです。
そのような力を国民一人一人つけるために
教育はあるのだと思います。
(明日へと続く)

今こそ磨く、リスク管理能力 その2 [科学ネタ]

私がリスク管理について考えるときに
すぐに思い付くのがダイオキシンと狂牛病の問題です。
今日はダイオキシンについて書いてみたいと思います。

ダイオキシンは私が二十歳くらいのときに大ブームになりました。
様々な産廃施設やゴミ処理場から
基準を遥かに超える非常に毒性の高いダイオキシンが
検出されて大騒ぎになりました。
空気中にダイオキシンが大量にばらまかれると健康被害がでるとか、
医学博士の方がテレビに連日でてその危険性を訴えて大問題になりました。

そのとき私はすぐに過去のデータを調べました。
何故なら皆さんお気づきではないかも知れませんが
マグロや魚に結構な量のダイオキシンが含まれていますし
ダイオキシンは炭火焼き肉でも、たき火でも何でも発生するのです!
これが身体に有害なら大変なことだからです。

ところが私が当時調べた
二、三十年間にダイオキシンで死んだ人もいなければ
健康被害もでたことはありませんでした。
あれから十数年たっていますが
未だに亡くなった方はいません。
ダイオキシンの毒性は確かめられていますが
この統計データから危険と言えるでしょうか?
私達が何か対策を講ずべきリスクと言えるでしょうか?

そもそも考えてみれば昔は囲炉裏や何やらで
今よりもダイオキシンが発生する可能性は五万とありました。
ですから、健康被害はより多くでてしかるべきです。
それなのに出ていないということは科学的に安全と言えます。
それを調べてから一切ダイオキシンについては気にしなくなりました。

そして、その推定が正しかったことは
2001年の東大医学部教授の和田攻教授の論文で明らかになりました。
「サリン事件のような特殊な場合を除けば、
人間はモルモットのようなダイオキシン感受性動物ではない」
というのがその結論です。

この論文以来ダイオキシンでの毒性騒ぎは終息しました。
ダイオキシンに毒性があったのは事実です。
ただそれには感受性の問題があったのです。
ダイオキシンはラットやモルモットには非常に毒性は高かったのですが
同じネズミのハムスターには同じ量では毒性は全くありませんでした。
(勿論ダイオキシンに発がん性が一切ないというわけではなく
リスク管理として一切気にする必要はないくらいだということです。)

我々は人体実験をするわけにはいきません。
ですから適当なネズミ等の結果を人間にも
援用して考えるしかありません。
ダイオキシンの問題は正にそこに盲点があったのです。

また最近では研究室のマウスは
普通のマウスよりも特殊な環境で育てられていて、
更に肥満なために実験結果に
様々な弊害がでてきていることが指摘されています。
そもそも実験室で使われるマウスは不健康なんです。

今回の放射性物質について
私がチェルノブイリの例をあげて健康被害について
考えてきたのもそのためです。
内部被曝は危険だとか
福島の野菜は危険だとか
皆口をそろえて危険、危険と言いますが
そういう状況だからこそ冷静に
世界最悪の事故で何が起きたかを学ぶべきだと思ったからです。
時々長崎広島と比較される方がいますが
原爆と原発は全くの別物です。
それはこのブログで原発事故初期の頃に説明しました。

私も理由はよくわかりませんが
チェルノブイリではヨウ素以外の健康被害は一切でませんでした。
半減期の長いセシウムが危険で骨や筋肉に蓄積して
深刻な健康被害をもたらすと言われています。
私も物理的な半減期から、以前にセシウム物理的な半減期は30年)
はヨウ素(半減期は8日)より危ないかも知れない
、というような記事をblogに載せました。
これはあくまでも物理的な話でこれが生物、
つまり人体に与える影響となると様々な
わからない部分がでてきてしまいます。
(東大の放射線科によるとセシウムの体内半減期は100日くらいだそうです。)
実際チェルノブイリ近辺では
セシウム濃度が累計で基準値より
数万倍~数億倍の野菜やキノコをバクバク食べていた人達が
数千人単位でいたのですが、
事故後調べてもセシウムが原因とみられる被害は報告されていません。
私は医学博士ではありませんので
何故大量のセシウムを摂取しても健康被害がでないのか、理由はわかりません。

このチェルノブイリの結果に対して
テレビではソ連がデータを隠蔽しているのだという方もいます。
もしそうだとしたら、割合から言っても外国の機関が調べにいったときに
一人や二人健康被害が出ている人がいても
おかしくないと思いますがそういうことは一切ありませんでした。
隠蔽があったのか否かは
私にも、誰にもよくわかりません。

ただリスク管理の観点からでいえば
自分の住んでいる場所がどれほど危険かという評価が大切になってきます。
これが曖昧にしかリスク管理できないものは本当に危険です。
交通事故などは車に乗らなくても飲酒運転などで巻き込まれることもあり
リスク管理は難しいのですが
放射線は嫌というほど細かく線量が計れる珍しいものなのです。
これほどリスクの管理のしやすいものはありません!
数値が自分の判断で大きいと思ったら気をつければいいだけの話なんです。
もちろん直接被曝の可能性のある作業員の人は大変だと思いますが
離れてくらす私たちにとっては全然怖がる必要のないリスクなのです。

書き出すと本論から著しく逸れますので
止めておきますが
私たちの生活には
リスク管理しづらい健康被害を及ぼす可能性の
ある物質が沢山混在しています。

総合的に考えて今回の放射性物質の放出によるリスクは
少なくとも私の住んでいる東京近辺ではなんの問題にもなりませんし
福島県近隣の県もほとんどがそうでしょうし
近くにお住まいの方は大変な嫌な思いをされているものと思いますが
その方々のためにも少し離れた我々は
風評などに惑わされないように良識ある行動をすべきだと思います。

(オマケ)
最近色々とデータが上がってきてわかりつつありますが
各地の放射線濃度を見ると3月16日のベンティングをピークに
綺麗にヨウ素の半減期と一致して
放射線の濃度が下がっています。
これは3月16日以降大気に新たな放射性物質はほとんど
でていなくて、3月16日に出たものが原発付近を風で対流したり
雨で地面に落ちたことを示しています。
そういう意味で原発は落ち着いた状態にあります。
あと
この前質問されたのですが
放射性物質の崩壊熱はどれくらい出続けるのか?
ということですが
それはかなり長い間出続けます。
ただ大体の推定をしますと90日で最初の熱の六分の一以下になり
後は減り方は非常に緩やかです。
もし何もできなくても最初から90日経てばかなり安全な状態です。
今回大きかったのはとりあえず地震で核分裂反応は止まったということです。
津波の大きさはかなりの想定外でしたが
そこが唯一の救いでした。
(明日に続く)

今こそ磨く、リスク管理能力 その1 [科学ネタ]

今回福島原発や津波で
様々なリスク管理が問われたと思います。
そのリスク管理について
国の問題は偉い人たちが論じますので
私は個人のリスク管理について書いてみたいと思います。

リスクを管理する前に
個々人の推定能力というものが問題になってきます。
今回の問題でいえば自分の住んでいるところで
どれだけの危険があるかです。
津波を過小評価して逃げずに亡くなった方や
原発問題で海外にまで逃亡された方もいます。
これらは個人の推定がどのくらいかという問題です。

この推定能力が理系では特に必須です。

最近では海外の有名な会社もこの力を重要視していて
「フェルミ推定」を面接で問うのは
外資の有名企業ではもはや当たり前となりました。

フェルミ推定というのは
今度私のブログで問題を載せてみたいと思いますが
例えばボーイング747型機にゴルフボールは何個入れられるか?
というような問題です。
これを10倍もしくは10分の一以内の誤差で推定できた人が合格です。
しかもなるべく瞬時にです。
勿論ボーイング747型機の大きさも
ゴルフボールの大きさも誰も知りません。
それを推定するのが頭の良さです。

これは私が入試問題を解くときにも使うことです。
私は特に数学、物理、化学なので
問題を読めば大体答えは推定できます。
問題を実際に解いて推定と著しい違いがあれば
どこかで計算ミスをしたということが分かります。
このミスをわかる
という能力こそが非常に大切です。
ケアレスミスは誰でもします。
でもそれに気づけるかどうかは
力だと私は思います。
昨年の受験生は特にこの点が優れていると
授業のときに何度も思いました。
(明日へ続く)


チェルノブイリに学ぶ [科学ネタ]

私が今まで自宅退避外の離れた地域では
あまり放射線のことは過度に気にし過ぎない方が
いいと書いてきたのは
一つの根拠があります。
それはチェルノブイリ事故の教訓からです。

チェルノブイリ事故では半径30㌔以内でしか
放射線による健康被害は
報告されていません。
しかも全てヨウ素による
主に牛乳が原因と見られる
子供の甲状腺癌が増加しただけで他の
放射線による健康被害は報告されませんでした。
(この地域の1981年から85年までは甲状腺癌の症例は39例だったものが
事故後、10年間で565人の子供が甲状腺癌になりました。
手術の成功率は高かったものの死亡例もベラルーシでは見られました。)

ところがチェルノブイリ事故では放射線以外が原因の死亡者が多数出ました。
それはストレス起因性の疾病でうつ病、不安症、その他の精神的な障害です。
また、今日では放射線の被曝に起因するものではないとされている
慢性気管支炎、心臓病、糖尿病の発症が事故後日を追うごとに増加したことが
報告されています。
あとはソ連の治療体制や衛生面の不備による伝染病でなくなった方もいます。

私は放射線の生体内への影響は様々な要素があって
評価するのが難しいと今まで書いてきました。
ただ言えることはチェルノブイリの教訓からも放射性物質そのものの
被害よりも
被災者や原発付近に住まれている方の精神的ストレスが
非常に心配です。

家を離れて暮らすだけでも大変なのに
いつ帰れるかわからない
放射線の影響は目に見えないので恐ろしい
などの非常に大きなストレスを感じておられると思います。
それに加えて政府が基準値を越えているが
しばらくの間は大丈夫だ
というような
大丈夫か大丈夫じゃないのかが分からないような
無駄な発表
あまり起きそうもない最悪の事態をことさらに
強調する科学者
などなど
ストレスの元となるものが沢山ありすぎて
そちらの方が健康に悪影響を与えることは
チェルノブイリの結果から見ても明らかだと私は思います。

このての原発事故で放射線ヨウ素以外の放射性物質による健康被害は皆無ですので
線量さえ気をつけていれば
離れた場所では安全だという
安心を持つのがまず一番大切ではないでしょうか。
この説明やカウンセリングをもっと増やさないと
ストレスによる健康被害がチェルノブイリのように多数でることは間違いありません。
そのあたりの態勢が全く整っておらず、結局不安ばかりを増しているようにしか
私には思えません。
自宅退避とか政府は比較的気軽に発表しますが
その安全なのか安全ではないのかというグレイソーンが
さらに不安を煽り、挙句の果てには自主退避などということを
発表しだしています。
これは全くその地域で生活されている方の精神面をケアしてないので
はないでしょうか?
全く安全な東京にいても外国人がどんどん逃げ出していくと
不安になる人もいるのです。
福島の方は本当に大変だと思います。

半径30㌔以上離れた地域で、心配になって非難されるかた
海外に行かれる方など
それはそれでいいと私は思います。
なによりも個人の精神の安定が保てることが第一ですから
自分が安心だと思える場所まで避難して
気持ちが落ち着いたら戻るということで構わないと思っています。
これから長期戦になりますので
精神的なストレスのためにも
避難地域外の人はあまり過度に心配し過ぎない方がいいのではないかと思います。

私も、この家庭教師ブログで
原発のことについて書き過ぎて
もしかしたらそれで不安になった方もおられるかもしれません。
そういう意図は一切ありませんので
そう感じた方がおられたら誠に申し訳ありません。
これからはなるべく普通の記事を書いていくようにしたいです。

日本の暫定規制値 [科学ネタ]

最近原発事故と相まってブログのネタも
家庭教師ブログとは呼べないような内容になって
しまっています。
そろそろ正常のブログに戻したいです。
そこで今日は最後に最近話題になっている
暫定規制値なるものについて説明してみたいと思います。
テレビなどを見ていると結構間違えて報道している場合があります。
あまり細かく考えると余計に混乱すると思いますので
簡単に説明します。

まず放射線の問題の大前提として
世界中で年間100msv(ミリシーベルト)以下の被曝によって
健康被害が出たケースというのは報告されていません。
ですからこれを基準に
欧米では基準値が設けられています。
それは半分の50msvです。
半分ならかなり安全だと思いますよね。
計算を間違えたり誤差が生じたりしても100msvには遠いです。
それでは日本の暫定基準値なるものはどれくらいだと思いますか?
牛乳や野菜や水が基準値を超える値の放射線の値がでて
出荷停止にまでになっています。

なんと日本の暫定基準値は5msvなのです!!!
これは欧米の10分の1の値です[がく~(落胆した顔)]
日本人はかなり心配症です。
健康被害がでる恐れがある100msvの5%なんです!
消費税分に達したら駄目ということです。
これは明らかに極端すぎます。
農家の方が可愛そうです。
最近やっと暫定基準値を見直そうという動きがでていますが…
もう被害はすでに甚大です。
今の暫定基準値だと10倍を超えたものがでて始めて
欧米や世界的な基準を超えたことになるのです。
ただ気をつけて頂きたいのは年間100msvだからといって
一度に100msvを浴びた場合と
コツコツ少しずつ総量が100msvを浴びた場合とでは違うわけです。
ですから、その総量に達するスピードにもよるので
健康被害が出ていないのは短い時間で浴びた場合なので
実際は100msvよりもっと高くまで大丈夫です。
そのこともあって現場の作業員の基準は総量で250msvに
改められたのです。

ここからは私の憶測ですが
アメリカに輸出した茨城県産の野菜が港で止められたという
ことが先日ありました。
しかし、おかしいことにアメリカは放射線量を計って高かったから
輸入を拒否したわけではなく
わざと放射線量は計らずに「どにかく駄目」だということで
港で止めたわけです。
私はおそらく放射線を計ったら都合の悪い結果がでるのは明らか
だから計らなかったのだと思います。
日本の野菜は日本の放射線の基準値の二倍くらいしか
せいぜい越えていないのです。
アメリカの基準値は日本の10倍ですので
普通に放射線検査をしたら日本の野菜は全然基準を超えていないので
輸入せざるを得なくなります。
さらにアメリカで出回っている野菜にはおそらく日本の基準値の5倍を超えた
野菜など平気で出回ってます。それでも勿論アメリカの基準値の半分なので
なんの問題もないわけですが…
日本の野菜は危ない危ないと世界中で言っているのに
自分の国ではそれ以上の放射線量の野菜が平気で出回っているようだと
世論が黙っていないからです。

これはあくまでも推測ですが
日本からきた野菜を放射線検査もしないで拒否するのは明らかにおかしいですよね。
これにはきっとなにか理由があると思います。

とにかく
欧米の基準値の半分、つまり今の暫定基準値の五倍くらいにして
も何の問題もないので基準値をしっかり世界基準で定めるべきだと思います。
それでないと日本の農業、酪農は本当に駄目になると思います。

放射線の生物学的影響の評価の難しさ [科学ネタ]

今回の福島原発のニュースで
何シーベルトまでの放射線なら健康に影響がないか
何ベクレルまでの食べ物なら大丈夫か
などが取り上げられています。
この基準値ははどのように決められているかについては
一時間当たりとか一年あたりとか
放射線を浴び続けたら健康被害を引き起こす可能性がある
ということでした。

しかし実際にはどれくらい放射線を浴びたら
どうなる、というのは非常に難しい話なんです。
ですから「引き起こす可能性がある」
といういい方になるわけなのですが…
今回はこのことについて書いてみたいと思います。
この事故以来様々な人に色々と聞かれ
説明するのがだんだん大変になってきたので
詳しくはブログをみてください
というためです(笑)

放射線の及ぼす生物学的影響は
stochastic(ストカスティック:本質的に確率的であるという意味)か
そうでないかの二通りに分けられます。
例えば癌や突然変異はstochasticな例の一つで放射線量
(普通原子力学の中では線量と呼ばれます)によって確率的に
引き起こされます。ある放射線量に対して決まるのは癌が発生する確率
であって、実際に癌になるかどうかはわかりません
そして癌の程度、厳しさは元々放射線量とは関係ありません。
最初の異変が起こって以降の長期にわたる状況によるわけです。
ですからstochasticな仮定において、
ある放射線レベル以下では全く影響がないとは言えないのです。
ですからレントゲンやCTによって癌になる確率は勿論あります。
ただレントゲンやCTによって体の異常がわかるというメリットが
癌になる確率を上げるというメリットよりも高いために医療として
被曝することが認められているわけです。
飛行機に乗っても、普通に生活していても結構放射線を浴びていますので
癌になる可能性はあるのです。
ですから、そもそも政府が発表しているように
今回の放射線量は~なのでCT一回分にも満たない
という類の発言は特に安心なわけではありません。
癌が発生する確率を高めるのは事実ですから。
ただ、その確率は非常に少ないということです。

このstochasticな過程に対してnonstochasticつまり
非ストカスティックな過程というのがあります。
こちらは確定的な影響で予測可能です。
そしてnonstochasticな影響の深刻さも放射線量によります。
例えば紅斑、白内障、血液障害などがあります。
これらには基準値があり、しきい値があるのでその線量以上を
被曝すると症状があらわれるようになります。

この二つの過程があるのですがテレビ等では詳しく解説されていません。
ただ基本的には今私たちが気にしている放射線量の方は
圧倒的にstochasticな領域での話です。
nonstochasticna影響はもっともっと高いシーベルトでの話です。
ですから確率的なので
確率的に直ちに健康に被害を及ぼす影響はないという
発言になるわけです。

これ以外にまだまだ生物学的影響を評価するのに難しい点があります。
それは生物学的影響が放射線量にだけ比例していれば非常に簡単で
わかりやすいのですが、実際の状況はもっと複雑で
放射の経路にそってどのようなエネルギー分布を持つか
ということも影響してきます。
わかりやすくざっくりいうと放射線の質、つまり線質にもよるわけです。
例えば同じ吸収線量に対して
高LET放射線、α線、中性子線のほうが
低LET放射線、β線、γ線よりも損傷の度合いが大きいです。
また、これが試験管の中の化学反応で起こるのなら評価しやすいのですが
生物系で起こる反応ですので遥かに難しいです。
ですからこのような質に対しては生物学的効果比(RBE)を用いて表します。
簡単に言うとγ線をあてたときの誘発的効果を比で表現するわけです。

これに関連して昨日、作業員の方が二名β線熱傷で病院に搬送されました。
しかも170msvという高い値の被曝です。
これはこの数値とβ線から長い間かけて被曝をした
つまり現場の作業員が何らかの理由で放射線の値の管理が出来ていな
かったことをしめすわけです。
仕事に集中していたのか、アラームをつけ忘れたのか
理由はわかりませんが…
このように放射線は量によっても確率的な部分もあり
質の違い、さらに生物系で反応が起こるので更に評価が難しいのです。

今回の福嶋原発の事故で様々な教訓がありますが
その一つとして
私たちは普段あまり放射線や原子力発電について考えていないのでは
ないでしょうか?
その知識の欠如などで
おかしな風評被害がでたりしているのかもしれません。
被曝というと日本では広島長崎を想像してなんとなく嫌なイメージが
ついて回るのはわかるのですが
それならもっと普段の被曝にも目をむけてもいいはずです。
そんな通常の被曝は気にもしないのに
それより圧倒的に少ないsvで健康被害を気にするというのは
私にはあまり納得がいきません。
そもそも地球に住んでいるときに自然被曝をしています。
旅行で飛行機に乗るときや、天然温泉に入るときもいちいち立て札に
「被曝する可能性があります」
なんて書いていません。
温泉は天然ではない方が安全なのですが
何故か天然の方がありがたがられます。
被曝の危険性を示す立て札がなくても文句を言う人はいません。
私は今かよっている歯医者で三回もレントゲンを撮られました。
でも歯医者にいって
被曝して癌になる可能性があるからレントゲン撮影を拒否する人も
あまり聞いたことがありません。
挙句の果てには皆さん宇宙に行ってみたいとか
宇宙飛行士になりたいなどと気軽に言いますが
宇宙に行くと大量に被曝します。
地球のかなり近くを宇宙旅行しても
少なく見積もっても一日1000μsvは自然被曝します。
私たちはこの宇宙に暮らす限り放射線とは常につきあっていかなければ
なりません。
今回の騒動が一つの教訓になればいいと思うのですが
特別な体の事情でもない限り
今発表されている細かい値の放射線は気にする必要がありません。
政府も本当は発表しなくてもいいレベルのなのですが
情報をすべて公開しないと
他にまだなんか情報を隠して言いるんじゃないか等の
入らぬ不信感を与えてはいけないと思って
細かく言い過ぎているのだと思います。

昨日私が書いたよう東京の水道水は基準値以下に下がりました。
雨の影響なので水を買い占める必要はありませんし
大げさにペットボトルの飲料水の増産なんてなぜやるのでしょうか?
正直言うと私は今回の雨でもっと多量にヨウ素が検出されると思いました。
原発から出るヨウ素も少しずつ減っていると思いますので
これからはもう少し減ると考えるのが普通です。
勿論地域性や風があるので一か所からまとまって高い濃度がでることも
あるのですが
それはしっかりサンプリングをして
高い時には水を飲むのを控えればいいだけのはなしです。

福島原発では毎日大変な戦いが続いています。
放射線拡散のおおもとを断たなければ
おそらく皆さんの安心は取り戻せないと思いますので
一日も早い終息をお願いしたいです。

何故三号機から冷却したか [科学ネタ]

福島原発では懸命の作業が続いています。
ちょっと質問を受けたのでその答えを書いておこうと
思います。

元々政府の発表では四号機の方が水が少なかったはずですが
何故三号機を徹底的に冷やしているのでしょうか?
これは三号機がプルサーマルだから融点が低いからなのでしょうか?
という質問を受けました。

私も実際に四号機が水が沢山あったから
三号機からだという話には疑問は感じています。
なぜなら発熱量が全然四号機の方が多いからです。
わからない方に少し丁寧に説明しておくと
プルサーマルとはウランに
プルトニウムを混入した燃料(MOX)を用います。
プルサーマル導入には様々な賛否両論がありました。
私もそれほど効率等考えてもいいとは思っていません。
ただ軽水炉でプルトニウムを使うのは危険だとは一概に言えません。
実際にウラン燃料を装荷した軽水炉で生ずるエネルギーの3~4割は
プルトニウムの核分裂から生じているからです。
ここで三号機を急がなくてはいけない理由は
二酸化ウランの融点は約2,800℃に対して
二酸化プルトニウムの融点は約2,400℃と400℃も低いからでは
ないかというご指摘の質問だと思いますが
それは純粋な二酸化プルトニウムの話しで
MOX燃料の融点は、ウラン燃料よりせいぜい数十度低い程度です。
ただ、プルトニウム量が増える事で融点や熱伝導度下がるのは事実です。
また、MOX燃料はウラン燃料よりボイド効果が大きくなるため、
ウラン燃料以上に出力上昇を抑える方向に働きます。

さらにMOX燃料付近では制御棒の効きが悪いので
実は三号機は臨界状態なのではないか?
という変なうわさも流れていますが
確かに
ウランとプルトニウムでは、中性子吸収や放出の性質が異なりますので
MOX燃料付近では制御棒の効きが悪いという現象が発生すると思います。
しかし、流石にそのようなことは想定されて設計されているはずなので
心配はいりません。
この他
プルサーマルには様々噂のようなものも沢山あります。

最初の質問に答えると
何故三号機なのかはわかりません。
ただ融点の問題ではありませんので
実際に三号機の方が水が少なかったのだと
発表を信じるしかありません。 

科学的に最悪の状態を考える [科学ネタ]

最近、福島原発の信じられないようなおかしな話が
インターネット等で流布されていますので
今回の事故を教訓に放射線や原発について考えてみたいと思います。

今回の事故で最悪のことが起こった場合どうなるのか?
その辺をテレビ等でも詳しく説明していませんので
中には核爆発が起こるとまで思っている人がいます。
しかし当然ですが原理的に原発で核爆発など絶対に起きないのです。
またメルトダウン、メルトダウンと炉心溶融が悪者のように言われていますが
メルトダウンを起こすことで核爆発を起こさないような仕組みになっています。

核爆発を起こすためには90%以上の高濃縮ウラン235や金属プルトニウムが
必要です。
さらに
その条件下で
瞬間的に摂氏100万度の高温高圧の気体状態をつくりださないと
核爆発は起こりません。

大前提として原発では、燃料で使われるウラン235の濃縮率は3~5%にすぎません。
そして仮に上記の100万度の高温高圧の気体状態が出来たとしても燃料棒の被覆管
(今回の事故ではジルコニウムが使われています。)の厚さは0.6mmと薄くできていて
そもそもが起こり得ない連鎖反応ですがその連鎖反応が進んだとしても、
核燃料が気化する前に燃料棒が溶解してくれます
つまりメルトダウンを起こしてくれるので核爆発にはならないのです。

このように有り得ない仮定にまで
更に安全策を講じて原発はできています。

また今回の事故とチェルノブイリの事故はあまりにもかけ離れています。
昨日書きましたが
福島原発では制御棒が働き、核分裂連鎖反応は起きていません。
あとは核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、
その崩壊熱で温度が上昇するから、冷却する必要があるんです。

この前提のもとで
それでは冷却が一切できないという最悪の事態になったらどうなるでしょうか?
その考えられる最悪の事態を知ることによって
安心して行動できるようになるのだと思います。
その辺の説明がマスコミであまりなされていないので
過剰な不安をあおってしまっているのかも知れません。

まず、今問題になっている使用済み核燃料のプールの
全ての水がなくなった場合
使用済み核燃料の温度が崩壊熱によって徐々に
核燃料の被覆管が解け、メルトダウンが起きます。
メルトダウンが起きても放射性物質の大半は固体なので
その場に放射性物質は居続けます。
その中で気体の放射性ヨウ素だけが外にでます。
このヨウ素は半減期が8日ですので
ウランなどに比べればかなり速い速度で減少していきます。
ただここで気をつけなければならないのは
その放射線ヨウ素を吸うことによって内部被爆することです。
ですから今でも原発の周りでは沢山の個所で
時々刻々放射線量を測っているわけです。
放射線は0.01μsvなど
嫌になるくらい細かく検出が可能です。
ですから、この精度の高い結果を見ながら行動すれば何の問題もおきません。
しかも、数値は全て一時間浴びた場合になっています。
その一時間の間になにもしなければ~という被害が起こると
いう仮定で作られていることにより安全が更に担保されているのです。

また次の最悪のシナリオとして格納容器破損による
放射性物質の大気中への放出という事態があります。
今回の事故ではありえない話ですが何でも大げさに考えて
おいた方が安心かと思いますのでチェルノブイリ事故の場合を考えてみましょう。
チェルノブイリでは
炉心内部の放射性物質が推定10t大気中に放出され、北半球全域に広がりました。
このときも大気に放出された放射性物質はヨウ素でした。
チェルノブイリ事故の際、ソ連政府は30km以上離れた地域に避難させました。
そして健康被害が実際に起きたのは大きく見積もっても50km以内です。
今回の福島の原発事故は勿論質が全然違いますが
遥かに小規模な事故です。まだ誰一人としてなくなっていません。

この規模の大きさで
半径20km以内の退避、20~30kmを自宅退避という
超安全策を日本政府はとっています。
これはもし一人でも健康被害が起きたら原子力発電の未来はなくなるからです。
ですからそれ以上離れた距離に住んでいる方は一切避難する必要はありません。
原理的に高濃度の放射性物質が20㌔も自然拡散することは有り得ません。
しかも、原発の周辺では常に細かすぎるくらい放射性物質を計っています。
ですから20kmを離れた地域に住む方は何の心配もする必要はないと思います。

ただ、勿論現場には固体の放射性物質が沢山あり
高い放射線をだしていますので絶対に近付かない方がいいです。
中には興味本位で近付くおかしな人もいたりして死亡事故が起こると大変なので
20km以内に人をいれないということもあります。

テレビで毎日判を押したように深刻な事態深刻な事態と
あいまいなまま言うので
あらぬ不安を生みだし日本国内から退避する人もでる始末になって
いるのだと思います。
現場におられる東電の社員、自衛隊員の方々は本当に過酷な作業を
されています。それは本当に深刻な事態です。
ですが20㌔以上離れている人にとっては深刻な事態というのは一切ないので
あまり過剰な反応はしないほうが良いかと思われます。

東日本大地震と津波によって日本は本当に大きな打撃を受けてしまいました。
こういうときだからこそ皆で助け合ってこの難局を打開しなければならないと思います。
それに各人が自分の出来ることをしっかりやるしかないと思います。
原発に関しては昨日消防車で水が入り、電気もそのうち復旧しそうな
明るい兆しが見えてきました。
ただ作業環境は本当に過酷です。
その中で死者等被害者が一人もでないように
終息させるためにはかなりの時間がかかると思います。
過剰な反応はせず、ゆっくりと応援し続けるのがいいと思います。

本当に

ガンバレ!日本!!

強誘電体における幾何学的フラストレーションその2 [科学ネタ]

ちょっと間隔が開いてしまいましたが
この前の続きです。
前回は磁性体の基本について書きました。
今日はそれをもとに幾何学的フラストレーションについて
説明していきます。

幾何学的フラストレーションとは
格子の幾何学的条件から
反強磁性体内部で起こる電子スピン配列の不安定性をいいます。
反強磁性体は前回書きました。
ほとんどのスピンが↑↑で揃っているものです。
このほとんどというのが大切です。
なるべく↑↑で揃えたいと思うのですが
一部分でどうしても幾何学的に↑↑にならない場合がでてきてしまいます。
これがfrustrationです。
うまくいかないから欲求不満なんです(笑)

どういう場合にうまくいかないかというと
たとえば三角形の頂点に局在電子のスピンがある場合を考えます。
スピン間に反強磁性的な相互作用が働いている場合、
3つのうち2つが反平行向きになって安定になります。
しかし残る1つはどちらとも反平行になれないため不安定になって
しまうのです。
全部が直線状にあればこのような問題は起こらないのですが
実際は空間的に複数のものが相互作用しますので
どうしても歪がでてしまいます。
このように、格子がもつ幾何学的条件によって
磁気秩序状態が実現しえないことを磁気的フラストレーションといいます。

しかし[exclamation×2]
このfrustrationは悪いことばかりではなく
むしろ様々な面白い、新しい基礎的現象を引き起こすのです[ぴかぴか(新しい)]
まさしく
Failure is a stepping stone to success.です
この幾何学的フラストレーションが生み出してきたものをざっと書くと
スピンアイス、スピン液体、スピングラスというエキゾチック状態の形成や
分数電荷量子化や磁気単極子の発見です。
その他にもリラクサーやマルチフェロイック挙動の起源や
巨大磁気静電結合、高転移温度超伝導の解明に使われてきました。
このように磁気の世界では
幾何学的フラストレーションが沢山研究されてきました。

そこに今回このアーカンソー大学は強誘電材料でも
幾何学的フラストレーションが起こっているという可能性を見出しました。
簡単に言うと磁気の世界だけではなく電気の世界でも
幾何学的フラストレーションが見つかったということです。
(見つかったという表現は不適切かもしれませんが)
これによって磁気の世界で大きな成功をおさめてきた
幾何学的フラストレーションがまた大きな可能性を広げたのです。
これから様々な発見が期待できる面白い分野だと思います。
また何か面白い論文があったら紹介します。

強誘電体における幾何学的フラストレーションその1 [科学ネタ]

natureの論文から興味深いものをご紹介致します。
(アーカンソー大学によるものです)
物理学に興味をもたれていない一般の方々にもなるべく
わかりやすく書きたいと思います。
わかりやすく書くために数回に分けて説明したいと思います。
興味のない方にとっては退屈かも知れませんが
お付き合い頂ければ幸いです。

今日は磁石について書きたいと思います。
皆さんは普段磁石を色々な生活の場面で使っていると思います。
冷蔵庫に貼りつけるマグネットやピップエレキバンなどもそうです。
小さい頃私も疑問に思っていたのですが
同じ鉄なのにあるものは永久磁石として働くのに
あるものはただの鉄
この違いはいったい何なのでしょうか?
実はこの磁性を持つか持たないかはスピンというものが
関係してきます。
わかりやすく二つの矢印で表現してみます。
二つの矢印は↑↑のように向きが揃っているか
反対向き↑↓かのどちらかが考えられます。
実はこのスピンの向きによって物質が磁性を持つか否かが決まります。
隣り合うスピンが同一の方向を向いて整列して
全体として大きな磁気モーメントを持つと
強磁性体といって皆さんご存じの磁石になります。
この物質は外部磁場が無くても自発磁化を持つことが出来ます。
ただ
室温で強磁性を示す単体の物質は少なく、
鉄、コバルト、ニッケル、ガドリニウムくらいです。

それに対して
バラバラに↑↑と↑↓が含まれているのが
常磁性体でそこらじゅうにある物質です。
常磁性体は普通の物質で磁場をかけたときだけ
ちょっと磁性をもつものです。
怖い体育の先生がピーと笛をふくと
皆さんがすっと整列するような感じで
綺麗に整列しないと俗に言う磁石にはなりません。
この強磁性を持つか常磁性を持つかは温度にも依存します。
その転移温度をキュリー温度と言います。

またこれから取り上げていく反強磁性というのは全部↑↓の
バラバラの状態で隣り合うスピンがそれぞれ反対方向を向いて整列し
全体として磁気モーメントを持たない物質のことです。
金属イオンの半数ずつのスピンが互いに逆方向となるため反強磁性を示すんです。
この反磁性が
この論文を理解するためには非常に重要です。

今日のまとめは
物質には
強磁性体、常磁性体、反磁性体があります。
強磁性体は磁石で、↑↑が集まったもの
常磁性体は普通の物質で↑↑と↑↓がバラバラに入ったもの
反磁性体は↑↓が集まったもの
です。
それではまた次回話を進めていきます。




たまには物理クイズでも [科学ネタ]

今日は物理クイズをだしてみたいと思います。
授業中に生徒から質問されたことが元になっています。
答えは近日中に書きますので
考えてみて頂ければと思います。

(問)
密閉された瓶の中にジュースが入っています。
その瓶には非常に細いストローが一本さしてあるだけです。
皆さんも極細のストローでジュースを飲んだことが
あるかと思いますが、なかなか中身を飲めません。
しかもストローの穴以外は密閉されていますので
なおさらです。
どのようにしたら早くこのジュースを飲むことができるでしょうか?


授業中の準備 [科学ネタ]

今年の受験もあと三カ月になりました。
この業界にいると一年が本当に早いです。
今年は今までで最高レベルの受験校の生徒がいますので
非常に大きな緊張感と充実感で毎日を闘っています。

今日は日曜日で授業自体はお休みですが
色々と準備をやらなければなりません。
昔は日曜日も授業をやっていたことがありましたが
体調を崩しましたし
しっかりと準備をする時間がなく
100%のいい授業はできていなかったと思います。
一週間を振り返り更に次の一週間を考えるためにも
日曜日の休みは重要です。

私は何でもしっかりと準備をしておくタイプです。
その方が悔いがないですし
仕事の本番でも思いきったことができます。
ある程度予定外のことが起こっても
準備をしっかりしておくと
うまく切り替えて一つの授業としてまとめることができます。
そのように臨機応変にいい授業が出来たときは
本当にうれしいです[わーい(嬉しい顔)][わーい(嬉しい顔)]
帰り道にウキウキしてスキップしちゃいそうになります(笑)
逆にうまくいかないときは凹みますが…

でも準備をしておくと失敗してもそんなに悔いは残りません。
授業は生き物で
家庭教師の授業は生徒が頑張ってくれないと前には進めませんので
私は出来るだけのことをやって
それでうまく進まなくても
それはそれでいいのだと思います。

受験はたった一回の試験で合否を決めます。
力があっても必ずしも合格出来るわけではありません。
生徒が本番で実際にどのようなパフォーマンスをしてくるかは
全く分かりません。
ある意味偶然の産物です。

しかし私が日々生徒に残す授業というのは
偶然ではなく必然です。
私がいい授業をすれば生徒に力がつきますし
悪い授業をしていれば何も変わりません。
これは受験結果よりも私には応えます。
半年、一年指導して
生徒のどこが変わってきた、良くなってきたというのは
常に具に授業をみている私自身が一番よくわかります。
半年後、一年後どのような姿になっているか
ということをいつも頭に描きながら授業を考えています。

なかなか思ったようにはいかないのですが
自分のやれることを一生懸命にやって
生徒にぶつけていれば
いつかそれに生徒が応えてくれるものだと信じて
毎日授業をしています。
今年の受験生にも頑張ってほしいです。

それではまた今から部屋に戻って授業の準備を考えたいと思います[パンチ]

昨日の物理クイズ解答 [科学ネタ]

昨日の物理クイズの解答を書いてみたいと
思います。
分かりやすいように問題を再掲しておきます。

(問題)
紙を破るとき素早く破った方が破ける音が高いのは
何故でしょうか?
①早く破くと紙と空気の相対速度が速くなる
②手や腕と紙全体が共鳴する
③時間あたりより多くの繊維が破ける
④気のせい

う~ん
今見直してみると選択肢の出来がイマイチですね。
これならすぐに答えが出てしまうかかもしれません。

答えは③です。
紙は多くのセルロース繊維からできています。
紙を破るときにこれらの繊維がきれ
空気を振動させて音がでます。
この仕組みを考えれば答えはすぐにでます。
速く紙を裂く
→一定時間に切れる紙の繊維が増加
→出る音の振動数が高まる
ということです。

日常生活の中は物理でいっぱいです。
高校までで習った物理でも結構様々な
日常の疑問を答えることが可能です。
何故?
と思って好奇心を持ち
じっくり考えてみることが
非常に大切だと思います。

久しぶりに物理クイズです [科学ネタ]

今日は4時に起きて仕事をしています。
朝早く仕事をしていると非常に捗ります。
頭の回転もいいです。

昔は明らかな夜型だったのですが
仕事で夜は疲れて帰ってくるからでしょうか…
最近は夜中に仕事をしても捗らないので
眠い時は早めに寝てしまって
朝早く仕事をするようにしています。

そんなこんなで今日も朝から
机に向かっていたのですが
(正確に言うと腰痛のために長くは座って
居られませんので
床に寝て仕事をしたり
机に戻ったりして仕事をするわけですが)
間違えてビリっと[どんっ(衝撃)]ルーズリーフを破いてしまいました。

その瞬間
ブログのネタが浮かびました(笑)

今日は物理クイズです。
ノーヒントでは難しいので四択にしてみました。
(問題)
紙を破るとき素早く破った方が破ける音が高いのは
何故でしょうか?
①早く破くと紙と空気の相対速度が速くなる
②手や腕と紙全体が共鳴する
③時間あたりより多くの繊維が破ける
④気のせい

答えは近いうちに書きます。
ゆっくりと考えてみてください。

平均余命について [科学ネタ]

最近100歳を超えるお年寄りが
実はずっと前になくなっていた
ということが次々と判明しています。

日本の平均寿命は私の記憶によると
女性が85歳、男性が79歳くらいですが
この発覚によって大幅に平均寿命は下がるのでしょうか?
実はそうでもないのです。
平均寿命という言葉から
1 年間に亡くなった方の死亡時の年齢の平均
と考える方が多いのですが
平均寿命とはそのような単純な平均で求められているものではありません。

実は私も厚生省のサイトで調べるまでは
単に平均して計算しているのかと思っていました。
ただ、これは感覚的にかなりおかしいと思っていました。
なくなった平均を単純に85歳とすると
仮に一人の方が50歳で亡くなった場合に
平均を85歳にするためにはこの一人に対して
90歳の人が7人もいないと平均は85歳にはなりません[がく~(落胆した顔)]
実際はもっと早く亡くなる方もいるわけですし
いくらお年寄りが多いからと言ってさすがにこの計算で85歳になることは
ないなあと漠然と思っていたんです。

同じようなことを思っていた方も結構いるのではないか
と思って今回は平均余命の計算方法の概略を書いてみたいと思います。

まず平均寿命の定義なのですが
平均寿命とは、現在における死亡状況が今後変化しないと仮定したときに、今
後出生する人が何年生きられるかという期待値である
となっています。
また、先ほどから私は平均余命と書いていますが
平均寿命とは0歳の平均余命のことです。

平均余命をもとめる流れを簡単に書きます。
まず、各年齢別の生存率を出します。
例えば30歳が100人いて2人なくなっていたら98%になります。
勿論、年齢が高い方が生存率が低いです。
また若い年齢層の中では乳児が死亡率が高く
20代も自殺等の関係で若干高くなっています。
その凸凹を数学的な近似でうまくならします。
その表を元にして
仮に今0歳が10万人いるとして
何歳まで生きるかというシュミレーションをしたものを考えて平均余命を
各世代でだします。
数学的には積分で求めるわけですが
簡単にいうとそのグラフの
ある年齢までの死亡数の合計=ある年齢以降の生存数の合計
(数というのは語弊がありますが)
となる点が平均寿命になります。

この計算方法だと
若い世代の生存率がいかに高いかの方が お年寄りが沢山生存しているかよりも大きくきいてきます
(グラフが急に下がらず面積があまり増えないからです。
勿論それに加えて高齢者の生存率が高いことが条件ではありますが)
ですから、医療技術が進む等して
若い世代があまり死なない国が全体として平均寿命が高くなります。
これはある世代が突然多く死んだりした場合にも
単純に平均するよりははるかに影響が少なくなっています。

平均寿命は0歳の平均余命であることからも分かる通り
今、仮に0歳の人がいてその人が何歳まで
生きる可能性が高いかという数値であって
今生きている人の単純な平均寿命ではありません。