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強誘電体における幾何学的フラストレーションその2 [科学ネタ]

ちょっと間隔が開いてしまいましたが
この前の続きです。
前回は磁性体の基本について書きました。
今日はそれをもとに幾何学的フラストレーションについて
説明していきます。

幾何学的フラストレーションとは
格子の幾何学的条件から
反強磁性体内部で起こる電子スピン配列の不安定性をいいます。
反強磁性体は前回書きました。
ほとんどのスピンが↑↑で揃っているものです。
このほとんどというのが大切です。
なるべく↑↑で揃えたいと思うのですが
一部分でどうしても幾何学的に↑↑にならない場合がでてきてしまいます。
これがfrustrationです。
うまくいかないから欲求不満なんです(笑)

どういう場合にうまくいかないかというと
たとえば三角形の頂点に局在電子のスピンがある場合を考えます。
スピン間に反強磁性的な相互作用が働いている場合、
3つのうち2つが反平行向きになって安定になります。
しかし残る1つはどちらとも反平行になれないため不安定になって
しまうのです。
全部が直線状にあればこのような問題は起こらないのですが
実際は空間的に複数のものが相互作用しますので
どうしても歪がでてしまいます。
このように、格子がもつ幾何学的条件によって
磁気秩序状態が実現しえないことを磁気的フラストレーションといいます。

しかし[exclamation×2]
このfrustrationは悪いことばかりではなく
むしろ様々な面白い、新しい基礎的現象を引き起こすのです[ぴかぴか(新しい)]
まさしく
Failure is a stepping stone to success.です
この幾何学的フラストレーションが生み出してきたものをざっと書くと
スピンアイス、スピン液体、スピングラスというエキゾチック状態の形成や
分数電荷量子化や磁気単極子の発見です。
その他にもリラクサーやマルチフェロイック挙動の起源や
巨大磁気静電結合、高転移温度超伝導の解明に使われてきました。
このように磁気の世界では
幾何学的フラストレーションが沢山研究されてきました。

そこに今回このアーカンソー大学は強誘電材料でも
幾何学的フラストレーションが起こっているという可能性を見出しました。
簡単に言うと磁気の世界だけではなく電気の世界でも
幾何学的フラストレーションが見つかったということです。
(見つかったという表現は不適切かもしれませんが)
これによって磁気の世界で大きな成功をおさめてきた
幾何学的フラストレーションがまた大きな可能性を広げたのです。
これから様々な発見が期待できる面白い分野だと思います。
また何か面白い論文があったら紹介します。
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