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科学的に最悪の状態を考える [科学ネタ]

最近、福島原発の信じられないようなおかしな話が
インターネット等で流布されていますので
今回の事故を教訓に放射線や原発について考えてみたいと思います。

今回の事故で最悪のことが起こった場合どうなるのか?
その辺をテレビ等でも詳しく説明していませんので
中には核爆発が起こるとまで思っている人がいます。
しかし当然ですが原理的に原発で核爆発など絶対に起きないのです。
またメルトダウン、メルトダウンと炉心溶融が悪者のように言われていますが
メルトダウンを起こすことで核爆発を起こさないような仕組みになっています。

核爆発を起こすためには90%以上の高濃縮ウラン235や金属プルトニウムが
必要です。
さらに
その条件下で
瞬間的に摂氏100万度の高温高圧の気体状態をつくりださないと
核爆発は起こりません。

大前提として原発では、燃料で使われるウラン235の濃縮率は3~5%にすぎません。
そして仮に上記の100万度の高温高圧の気体状態が出来たとしても燃料棒の被覆管
(今回の事故ではジルコニウムが使われています。)の厚さは0.6mmと薄くできていて
そもそもが起こり得ない連鎖反応ですがその連鎖反応が進んだとしても、
核燃料が気化する前に燃料棒が溶解してくれます
つまりメルトダウンを起こしてくれるので核爆発にはならないのです。

このように有り得ない仮定にまで
更に安全策を講じて原発はできています。

また今回の事故とチェルノブイリの事故はあまりにもかけ離れています。
昨日書きましたが
福島原発では制御棒が働き、核分裂連鎖反応は起きていません。
あとは核分裂で生じた放射性同位元素が燃料棒にあるので、
その崩壊熱で温度が上昇するから、冷却する必要があるんです。

この前提のもとで
それでは冷却が一切できないという最悪の事態になったらどうなるでしょうか?
その考えられる最悪の事態を知ることによって
安心して行動できるようになるのだと思います。
その辺の説明がマスコミであまりなされていないので
過剰な不安をあおってしまっているのかも知れません。

まず、今問題になっている使用済み核燃料のプールの
全ての水がなくなった場合
使用済み核燃料の温度が崩壊熱によって徐々に
核燃料の被覆管が解け、メルトダウンが起きます。
メルトダウンが起きても放射性物質の大半は固体なので
その場に放射性物質は居続けます。
その中で気体の放射性ヨウ素だけが外にでます。
このヨウ素は半減期が8日ですので
ウランなどに比べればかなり速い速度で減少していきます。
ただここで気をつけなければならないのは
その放射線ヨウ素を吸うことによって内部被爆することです。
ですから今でも原発の周りでは沢山の個所で
時々刻々放射線量を測っているわけです。
放射線は0.01μsvなど
嫌になるくらい細かく検出が可能です。
ですから、この精度の高い結果を見ながら行動すれば何の問題もおきません。
しかも、数値は全て一時間浴びた場合になっています。
その一時間の間になにもしなければ~という被害が起こると
いう仮定で作られていることにより安全が更に担保されているのです。

また次の最悪のシナリオとして格納容器破損による
放射性物質の大気中への放出という事態があります。
今回の事故ではありえない話ですが何でも大げさに考えて
おいた方が安心かと思いますのでチェルノブイリ事故の場合を考えてみましょう。
チェルノブイリでは
炉心内部の放射性物質が推定10t大気中に放出され、北半球全域に広がりました。
このときも大気に放出された放射性物質はヨウ素でした。
チェルノブイリ事故の際、ソ連政府は30km以上離れた地域に避難させました。
そして健康被害が実際に起きたのは大きく見積もっても50km以内です。
今回の福島の原発事故は勿論質が全然違いますが
遥かに小規模な事故です。まだ誰一人としてなくなっていません。

この規模の大きさで
半径20km以内の退避、20~30kmを自宅退避という
超安全策を日本政府はとっています。
これはもし一人でも健康被害が起きたら原子力発電の未来はなくなるからです。
ですからそれ以上離れた距離に住んでいる方は一切避難する必要はありません。
原理的に高濃度の放射性物質が20㌔も自然拡散することは有り得ません。
しかも、原発の周辺では常に細かすぎるくらい放射性物質を計っています。
ですから20kmを離れた地域に住む方は何の心配もする必要はないと思います。

ただ、勿論現場には固体の放射性物質が沢山あり
高い放射線をだしていますので絶対に近付かない方がいいです。
中には興味本位で近付くおかしな人もいたりして死亡事故が起こると大変なので
20km以内に人をいれないということもあります。

テレビで毎日判を押したように深刻な事態深刻な事態と
あいまいなまま言うので
あらぬ不安を生みだし日本国内から退避する人もでる始末になって
いるのだと思います。
現場におられる東電の社員、自衛隊員の方々は本当に過酷な作業を
されています。それは本当に深刻な事態です。
ですが20㌔以上離れている人にとっては深刻な事態というのは一切ないので
あまり過剰な反応はしないほうが良いかと思われます。

東日本大地震と津波によって日本は本当に大きな打撃を受けてしまいました。
こういうときだからこそ皆で助け合ってこの難局を打開しなければならないと思います。
それに各人が自分の出来ることをしっかりやるしかないと思います。
原発に関しては昨日消防車で水が入り、電気もそのうち復旧しそうな
明るい兆しが見えてきました。
ただ作業環境は本当に過酷です。
その中で死者等被害者が一人もでないように
終息させるためにはかなりの時間がかかると思います。
過剰な反応はせず、ゆっくりと応援し続けるのがいいと思います。

本当に

ガンバレ!日本!!
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コメント 1

ポリンキー

とてもわかりやすい説明ありがとうございます。
日本には原発が沢山あるのに不勉強でアタフタしていた自分が恥ずかしいです。やはり
勉強って大切ですね!
by ポリンキー (2011-03-18 11:27) 

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