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今年のノーベル化学賞について [科学ネタ]

今年のノーベル化学賞は
準結晶を発見したイスラエル工科大学のShechtman教授に与えられました。

私も以前に勉強したことがある
有名な教科書キッテルの固体物理学入門には
結晶には一回対称(任意の図形)
二回対称(例えば長方形)
三回対称(例えば正三角形)
四回対称(例えば正方形)
六回対称(例えば正六角形)しかないと書いてあります。
五回対称の図形にはどうしても隙間ができてしまうため、
有り得ないというのが定説であり科学的常識でありました。
注:~回対称というのは例えば正三角形は三回転がせば
  元の位置関係に戻るということです。

しかし
実際には多くの実験の中で
五回対称や十回対称はみられていたのです。
多くの科学者がこれを常識的に考えて有り得ないので
見て見ぬ振りをを故意ではなくとも
してきました。
ところがシェヒトマン教授は違いました。
この五回対称や十回対称が有り得る空間構造であることを証明したのです。

不幸にもこの論文は
化学学会から馬鹿にされ
二年間も受理されませんでした。
ノーベル賞を二度受賞した
天才ポーリングは
彼の論文を「子供でもしない初歩的なミス」で馬鹿げたものだと一笑に付し
他の科学者もこぞってこの論文を批判しました。
しかし、シェヒトマン教授はこの批判にも一切揺るぎませんでした。

彼はアルミニウムとマンガンの合金で
最初に五回対称を観察したそうです。
先入観や常識に囚われた科学者なら
自分の実験ミスだと思うところです。
ましてや多くの人の批判を浴びれば
自説を曲げるか
研究を止めるのが普通だと思います。
しかし科学に対するシェヒトマン教授の
飽くなき探求心が
彼を真実へと導いたのでした。

このシェヒトマン教授の姿勢は正しく科学者の鏡です。
私も優秀な生徒には授業中何気なく
間違えた答えを提示することがあります。
「先生の言っていることは全て正しい」
と常識にとらわれていないかを確認するためです。
もし生徒がしっかりと自分の頭で考えて
私の話についてきていれば
その間違いには当然気付くはずなのです。
ちょっと意地悪なことかも知れませんが
教科書に書いてあること
先生が言うこと
どんな権威のある人が言うことでも
疑って自分で考えることを捨ててはいけません。
「自分で考える」大切さを
私は授業の中で強いメッセージとして伝えています。

彼の論文はその後様々な科学者の論文によって
裏付けられ2007年の論文(イッテルビウムとカドミウムの準結晶構造)
によって正さが決定づけられました。
詳細は省きますが
これには多くの日本人が貢献しています。

準結晶はもはや結晶のオマケではなく
むしろ準結晶の方に普遍性があります。

自然はランダムより対称性を好むようです。

今回のシェヒトマン教授の受賞で
改めて科学は疑って探究することが
大切だということを実感しました。
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