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第1講 ソクラテスの登場~前編~ [哲学概論]

ソクラテスのことを書けという要望で始まったコーナーなので
ソクラテスから始めないわけにはいきません。
しかし、その前にソクラテスが現れる前のギリシアの流れを
書いておかないと分かりづらいので
まずは紀元前6~4世紀に生まれた自然哲学者から書いていきたいと
思います。

今回の話の大まかな流れを書きますと
神話(ミュトス)の時代→自然哲学者の登場→ソフィストの登場
→ソクラテス
です。この流れを分かって頂ければ今回の講義はOKです。

紀元前6世紀以前は皆さんも何かで聞いたことはあるであろう
古代ギリシア神話に基づいた神話的世界観でした。
ゼウスを主神としてオリンポスの神々、つまり
オリンポス12神がこの世を支配していると考えていました。
かの有名なパルテノン神殿の柱にはこの12神が刻まれているそうです。
この神々の世界を描いた有名な詩人がホメロスとヘシオドスです。
特にホメロスが「イリアス」の中で描いた「トロイの木馬」の話は有名だと思います。
色々とギリシア神話の逸話を読んでいただければわかるように
ざっくり言うとギリシア神話の言いたいことは
「どんな英雄であっても神々、神々が定めた運命には逆らえないのだ。」
ということです。
このギリシア神話は口承でおよそ紀元前15世紀に始まってから
長く信じられてきたのですが
紀元前6世紀ころになって、そんなあるかどうかもわからない神話、作り話
なんて信じてられるかという人が出来てきました。
それがギリシアの植民地だったミレトスの人々です。
エーゲ海をのぞむ、貿易が盛んだったミレトスでは
おそらく商業で培われた合理的な思考が発達していたのでしょう
「万物の始まりはなにか、根源は何なのか」という万物の始源(アルケー)を
考え始めたのです。
神話をただ鵜呑みにするのではなく、人間の持つ理性(ロゴス)で世界の始まりを
考えようとしたのです。
これが自然哲学者の登場です。

自然哲学者には有名な人がたくさんいます。
タレス、ピタゴラス、デモクリトス、ヘラクレイトス、アナクシマンドロス、パルメニデス

それぞれ万物の始源は何か?つまりこの世界は何でできているか?
という問題に取り組みました。そしてタレスは「水」から(多分エーゲ海の影響
でしょう。)ヘラクレイトスは「火」から万物はできていると考えました。
全ての人について詳しく書くわけにもいかないので
ここでは独断と偏見で科学に関係がある
ピタゴラスとデモクリトスについて書いておきます。

ピタゴラスは皆さんが大体中三か中二で習う
直角三角形の「ピタゴラスの定理(三平方の定理)」で有名です。
余弦定理を習うまでは、また習った後も大変お世話になる
定理です。私も一日に10回は授業で使うのではないでしょうか。
そんなピタゴラスですが、彼は宇宙は数的な秩序つまり比例関係で
成り立っていると考えていました。万物の始源は「数」だというわけです。
ピタゴラスはプシュケー(魂)の不死と輪廻を信じており
数学的な秩序を学ぶことで魂は浄化(カタルシス)されるという
思想を持っていました。
現在の数学オタクも私もいくら数学が好きだからと言って
流石にそんなことまでは思いません(笑)
そして、ピタゴラスは自分で数学を研究する教団を作ります。
俗に言うピタゴラス教団です。
数学の研究をする宗教団体なのですが
そこで見つけた定理等は他言してはいけないなどの厳しい規則があった
ようです。実はピタゴラスの定理、つまり三平方の定理は
ピタゴラスによって発見されたものではなく
この教団の誰かが発見、もしくは持ちこんだものだと言われています。
ピタゴラスは哲学者なので数学的素養はそれほどなかったとも言われています。

もう一人のデモクリトスですが、彼は高校の化学の教科書にもでてきます。
デモクリトスは、西洋近代思想の根幹を成す
唯物論(これについては機会を改めて書きます。)の先駆けと言われています。
デモクリトスは
様々な自然哲学者、つまり万物の始源は何なのかを考える人たちが
各々、それは火だとか水だとか数だとか言っているのですが
仮にどれであったとしても、始源となるものが決まっているのに
何故それからできる世の中のもので同じものが存在しないのか
という自然哲学が構造的に持つ弱点、難問に対して一つの答えをだします。
それは空虚(ケノン)である宇宙空間を原子(アトム)が動き回り、結合、分離すること
で万物が生成されるということです。
彼が世に現れたのが自然哲学末期
紀元前400年前後であることを考えると恐ろしい先見の明です。

そして時を同じくして紀元前500年くらいから
万物の始源を求める自然哲学の考えを否定して
始源などという絶対的、普遍的な真理などは
ぞもそも存在しないんだという
ソフィストと呼ばれる人々が現れるのです。

→後編に続く
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