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英語教育について [受験]

(英語は会話ができればできるんじゃないか伝説)
昨今の迷走する会話重視の英語教育について
私が感じていることを書きたいと思います。

私たちの母語は日本語で
大抵の人は日常で英語で「会話」をする必要すらありません。

私は日本人が必要な英語能力は
読める>書ける>話せるの優先順位だと考えています。
ですから幼い頃から、話して英語を学ばせる教育に
かなりの疑問を感じています。

日本人の大学生は確実に英語が書けなくなっています。
私が数年前、大学院入試の予備校で
頼まれて、量子力学を教えていた時にそれを強く感じました。
生徒は勿論、世にいう一流大学の生徒ばかりで
その中には、中学高校とアメリカ留学していた子もいましたが…
涙がでるくらい英語が「書けません」

何がよくないかと言えば
①書いている言葉が口語、というより表現が拙い
②文法を間違えすぎ
私は確かに職業柄、人の英語の文法をチェックする
立場にあるので余計に気になるのかも知れませんが……
ここであえて例はあげませんが、
本当に声を上げるくらいの間違えの連続です。
……量子力学の授業の前にまず英語を教えなければ
と思ったくらいです。
少なくとも、私の学生時代にこんな英語には出会ったことがない!
という位のレベルです。
この手の話は大学の先生と話してもよく聞く話ですので、
総体的に会話重視教育の「成果」は出ているのだと思います。

会話から始めると何故よくないか?
それは、我々の母語の日本語にあてはめて
考えるとよくわかりますが、
話せるようになった言語はその言語についてあまり深く勉強しません。
私たち日本人のほとんどが日本語のネイティブスピーカーですが、
日本語の文法についてよく知り、しっかりと書けるか
といえば甚だ疑問を感じます。日本人全国文法一斉テストなるもの
をやってみれば、きっとわかりますが、ひどい結果だと思います。
しっかり日本語を勉強してきた外国人に絶対に負けます。
そして、その時皆が言うであろう言い訳は
「話せればいいじゃん(横浜弁)」なのです。

この考え方は面白いことに世界共通です。
私が前にアメリカ人(英語しか喋れませんので英語で授業を
していましたが)の高校生を教えていた時にも、
さすがに看過できない英文法のミスがあり、それを指摘すると
同じことを言われました。
「先生、話して通じるんだからいいんじゃないですか?」と

(迷走する英語教育)
このように日常会話程度でも
話せるようになってしまった
言語に対して我々はあまり深く掘り下げて考えません。
話せる言語に対して詳しい文法事項や表現を
文筆家や専門家でもない限り学ぶ人は少ないんです。

このことがあろうことか
第二言語の英語で起きようとしています。
子供の頃から英語会話教育に
どっぷりとつかってしまって、
会話は流暢だが、しっかりと書けない。
英語という言語についてよく知らない……

一般的に我々はわかったことに
対して考えが甘くなります。
改めてそれを学び直そうとする人は
なかなかいません。
むしろ、わからないと「思い続ける」人の
方が一生懸命勉強し続けます。
(会話ができる)=(英語ができる)
であると誤解してしまいます。
しっかり読み書きできるようになるレベルまで勉強する人は稀です。

それなら、英語で会話も文法も書くことも小さい頃から始めればいいのではないか?
と考える人もいるかもしれません。
確かにそうです。私も英語で全部をやるなら問題はないと思います。
ただ、その分当然日本語はできなくなります。

人間は言語で考えます。ですから、早い段階で一つの言語をしっかり
極めた方が、早く深い思考をすることができるようになります。

仮に100という労力(時間)が言語にかけられるとします。
A君日本語90 英語10
B君日本語50 英語50
これはどちらが早く、深い思考ができるようになるかと
いうと明らかにA君です。
なぜなら、言語レベルという観点から考えれば
A君90、B君50だからです。

誤解のないように言っておきますが
これは日本語だけをやらせるのが正しいと言っている訳ではありません。
どうせ、英語をやらせるなら
英語90 日本語10で勉強し、英語で考えるようにすれば
いいということです。中途半端が一番よくないということです。
将来どこで過ごすか、どこで仕事をするか
何語で考えるかを考えて言語を選択し
まずば第一言語で、読み書き思考をできるようにすべきです。

そういう観点から考えた場合
大半の日本人はもっと日本語について
小さいうちからしっかりと勉強し、本を読むべきだと思います。
それが結局最短距離なのです。

はっきり言って、中学三年高校三年の六年の間
毎日1~2時間しっかり英語の勉強をすれば
誰でも普通に読み書きできるようになります。
それを継続してやらないから英語ができないだけです。
私も特に留学はしたことは、ありませんが
普通に大半の英語の文章は読めますし、書けます。
たぶん、英語の文法等については(当たり前ですが)
普通の英語のネイティブよりもずっとわかっています。
外国語として言語を掘り下げて学んだ方が、はるかに
その言語がわかるようになりますし、そこから自分の
母語に関しても客観的にわかるようになるのです。

読み書きさえできれば、普通、会話はできます。
よっぽどの恥ずかしがり屋でない限り(笑)
生きた英語を学びたければ、読み書きできるように
なってから留学すれば三か月もたたないうちに話せるようになります。

逆は絶対ありません。英語について何も知らなくて三か月留学しても
明らかにただの人です。(昔、私の生徒にもいましたが)

私たちのほとんどが、どんなに頑張っても日本人のままです。
外国で何年暮らしても、その国では日本人扱いされます。
これも逆の立場を考えてみれば明らかです。
もう日本暮らしの方が長いアメリカ人タレントがいますが、
彼らは日本人のように扱われているでしょうか?
我々がどんなに英語がうまくなり、外国人と自由に話せるようになっても、
必ず日本のことについて聞かれます。(日本人代表のように)
私も、たまに電車等で外国の方から話しかけられますが、
決まって日本の文化や、歴史、日本人について聞かれます。
このことは、留学しても何をしても避けられないことです。
我々は外国の方と接すれば接するほど、自分は日本人だということを強く認識します。
その時に、日本について何も説明できないと本当に恥ずかしいです。
きれいな発音で中身のない会話ほど恥ずかしいものはありません。
それよりも、発音が少々悪かろうが、日本についてしっかり説明できる
素養のある人間の方がずっと信頼されます。

これから英語は絶対に必要です。
論文やインターネットの情報も英語で書かれていますし、
英語でしっかりとした文章を書かなければならない機会も
時代の要請によって増えてきます。

最近の英語教育の会話化は、圧倒的に日本人の人間としての力を落としています。
学校で会話の練習?なんておかしな話です。
会話をしたければ外国に行った方がはるかにできるようになりますし、
日常英会話なんて滅多に日本では使いません。

それよりも、外国の思想や文化をその国の言語のまま理解する
読み書きの力のほうが圧倒的に私は大切だと思います。
我々の高校生の頃はラッセル、モーム、リンド、ハクスリー、マークウェイン等々を
授業で読みました。また、それに触発されて、自分でもそのような本を買ったものです。
たくさんの素晴らしい英語(一流作家は英語の文章自体が美しいです)
や思想に「直接」触れることができ、感動できたものです。
今の若者から、そのような感動を奪うのはかわいそうだと私は思います。

そのような文章の素晴らしさがわかる為には、それまでに思考力、言語力を高めなければ
なりません。
そのためには、日本の教育のあるべき姿は
小学生までは国語95英語5(アルファベットに不自由しない程度)の割合で教育し、
その代り中学以降は英語の読み書きの授業を今よりも増やせばいいと思います。
高校では英語を言語学としてしっかり学ぶべきです。
そしてこの時期にたっぷりリスニングもやります。
聞くトレーニングは重要です。
英会話教育の唯一の利点は聞く力がつくということです。
ただ、聞けない理由は発音自体や英語の速度についていけないことも確かに一因ですが、
そもそも英語の力不足で単語等が分からず聞き取れないことも、かなり大きいのです。
英会話は中学高校では選択か、クラブ活動で行えばいいと思います。

このようにしっかり英語で読み書きをトレーニングしておけば、大学以降英語で困ることは、
まずありません。もちろん六年間真面目に勉強した場合ですが…。
楽して勉強は絶対にできるようにはなりません。

そのうち、英語は英語で授業をするようになるらしいですが
何を考えているのか、よくわかりません。
教師が英語で生徒に英文法やその他の難しい説明をしても
まず、その説明の英語が生徒はわかりません。
ですから、必然的に誰でもわかるような内容を勉強するようになります。
そうするとさらに必然的に英語の言語レベルは下がります。
この迷走はいつまで続くのでしょうか?
そのうち、おそらく迷走を迷走と気付かないレベルまで
学力が落ちた時に何の問題もなくなるのでしょうが……
そうなる前に、一人一人が英語教育の「目的」「意義」
について考え、それに合った教育をすべきだと私は思います。
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