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アンテナ [雑感]

私達は影をみているのかも知れない。

数学を考えているときに
ふっとそのような考えが頭をよぎることがよくあります。
(問題に集中しろ~と自分では思うのですが)

自分の書いた直線はよくみると直線ではありません。
これは別に線が曲がっているからではなく、
直線を書くと必ず面積を持つからです。
これは点にも同じことが言えます。
点を打つ、そうするとどうしても面積を持ちます。
 
ユークリッドの定義によれば点とは部分のないもので、線とは幅のない長さです。
このようなものは書きようがありません。
このような疑問は何も私だけが感じている訳ではなく
大昔から考えられていたことです。

数学を発展させたギリシア人たちは
イデアの世界をみているのだと考えました。
私たちが三角形を書くと厳密な定義による三角形は
目の前にはありません。頭の中にあります。
点や直線もそうです。
実際に図として描いたものは
たとえて言うならば影に過ぎないのです。
私達は影をみてイデアの世界を実感しているのです。
有名なプラトンの「国家」第七巻の鎖で洞窟の壁に束縛された囚人のように

この世に点や直線でさえも現実には存在しない。
また点を集めれば直線になるというのも定義から考えてみれば
おかしな話です。

このユークリッドの定義は20世紀初頭にヒルベルトという大数学者の深淵な思考によって
修正が加えられました。
ヒルベルトは「幾何学の基礎」という本でユークリッドの定義を修正しています。
ユークリッドの定義によると、幾何の根本的な点や直線の定義が曖昧です。
これは数学という論理学において非常に都合が悪いのです。
この都合の悪さに気付きながらも、数学は1000年以上もこの定義の問題点に
触れずに進んできました。
(ユークリッドは紀元前の人ですが、一般に彼の著書「原論」が認知され始めたのは
7世紀くらいではないかと言われています。)

ヒルベルトはこの大きな壁を「関係」を考えることで乗り越えました。
非常に斬新なアイデアです。
簡単にいうと点と直線…などを定義するのではなく
それらの相互関係を定義するのです。
関係さえ定義すれば、点、直線、平面の言葉を定義しなくてもいいのです。
もはやこれらの直感的イメージさえ必要ありません。
ヒルベルトはテーブル、椅子、ビールのグラスを使っても
幾何学ができると言いました。
この有名な言葉に全ては集約されています。

私が初めて「幾何学の基礎」を読んだのは、
偶然古本屋さんで立ち読みしていた時です。
今でもこの時の衝撃は忘れません。
4時間くらい立ち読みしていたと思います。
(本屋さんごめんなさい)

考えてみれば、私がそのとき「幾何学の基礎」の素晴らしさが
わかったのも、ユークリッド幾何学をしっかり勉強していたからです。
もし、そのような素養がなければ
手に取った本はすぐに本棚へと返していたと思います。

何かとの出会いというのは本当にタイミングが大切ですね。
受け取る側もしっかりとアンテナを張ってなければ
素晴らしい出会いは素通りしていきます。
ですから、自分をしっかりと磨きながら
いつも様々な方向にアンテナをはっていないといけません。

私も自分の人生を振り返ると
自分が無知で未熟だった為に
多くの人の重要なアドバイスに耳を貸せなかったという
苦い反省が沢山あります。

日々自己を研鑽し、しっかりとアンテナを張って生きていきたいです。


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