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勉強して視野を広げる [雑感]

科学の面白さというのは
色々とあります。

私のように理論物理学や数学の研究をしている人の面白さというのは
「解釈の面白さ」というのが大きいと思います。

一見無秩序なものの間にある秩序に気がつく
それが法則の発見であったり、定理の発見であったりするわけですが
その秩序の気付き
というのは同じ視点、同じ次元で考えていては
生まれない場合があるんです。
その時に
他の分野との統合的な視点、新しい考えかたなどを踏まえた
新しい解釈というのが生まれることがあります。
その解釈によると
今まではまったく別のものに思えたことが
実は同じことだったり、裏表の関係であったりする。
そういう解釈を見つけ出した時に
非常に大きな喜びを感じます。
その喜びを味わってしまうと、
もう数学や理論物理の世界からは抜け出せなくなってしまうんです。
自分だけが人の見ていない面、ある真理に到達できたという喜びもあります。

解釈によって色々変わる
というのは
何も数学や理論物理だけではなないです。
人生における困難も似ていると思います。
思春期の時の悩みというものを
大人になって考えてみると
全く違った解釈からその悩みを見るので
随分当初感じていたものとは違うように感じられます。

このような科学的な解釈も、人生的な解釈も
ふってわいたように自然にでてくるわけではありません。
自然に出てくる人がいれば天賦の才能があると思います。
でも私を含めた大半の人はそうではなく
「経験」によって生まれてくるのです。
科学で言いますと
非常に様々な分野について勉強する(一見関係なさそうなものも含めて)
という経験が非常に大切だと思います。
何でも先入観で不必要だと、今の狭いし視点で判断するのは危険です。
不必要だと思うのは自分考えかたが狭いからかもしれないんです。
本当はもっと広い勉強をしていれば
必要だと気付くはずのものかもしれないわけです。
ですから先入観をもたずあらゆる分野の勉強をすることが大切だと思います。
科学のあらゆる分野、私は理論物理で宇宙の始まりを研究していますが
その研究の中で、物理、化学、地学、生物、音楽…等のあらゆる考えかたアイデアを
使わせてもらうことがあります。
え~っ、こんなものはこんな風に使えるの!!!
という驚きは沢山あります。
同じ分野だけ研究していては、見えるものというのは限られています。

以前ポアンカレ予想(単連結な3次元閉多様体は3次元球面 S3 に同相である)
について書きました。
ポアンカレ予想は100年間だれも解けませんでしたが
様々な解釈の移行の末、ペレルマンが解いたのですが
ポアンカレ予想は本来位相幾何学の問題で、当然位相幾何学の専門家達が
その解決に向けて頑張っていたわけですが
結果として実はポアンカレ予想は微分幾何学の問題であり、理論物理学者なら
誰でもが気付くアイデアによって、まったく異なる分野の専門家ペレルマンによって
解決されたのです。

このように何かが行き詰ったときに解釈を変えてみる、見方を変えてみる
ということが非常に大切なんです。
そして、解釈を変える、見方を変えるためには
自分で分野の線をひかずにあらゆる勉強をしてみることが大切なんです。

悩める思春期もそうです。
狭い世界で考え続けても答えはでません。
広い視野を身につけるために、まずは何でもいいから
色々なものにチャレンジしてみる
その過程で様々な視点がみにつき
元々の自分の悩みに対して解決策が生まれるかもしれませんし
全く違った解釈をすれば
悩むようなことでもなかったという結論になる可能性もあるんです。

今、自分に圧し掛かる難題に対して
何も解決策がないと思うのは
自分の視野が狭いかなのだと思います。

幸いなことに私たちは人生でまなべる以上のことを
先人の知恵として学ぶことができます。
それが読書の意義だと思います。
自分の知らない分野、興味のない分野の道を切り拓いた人との
対話をする機会を読書というのは与えてくれます。

最近、ここ二年が特にそうでしたが
忙しすぎてあまり本を読めませんでした。
今年は結構移動距離が長いので
移動する間くらいは
読書が楽しめるように
日々の授業準備を頑張ってみたいと思います。


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まいくる

そこまで勉強の面白さ、もっというと面白いを越えて、苦痛も伴うような自分の思い込みを壊す手段のひとつとして、(受験)勉強はとても有意義だと思いますし、若ければ若いほどその子にそれなりに勉強をやらせるのはある意味大人としての義務に近いと感じています。
 物理屋さんは生徒(あるいは、一般的な十代以上の人)が勉強したくなければしなくてよし、とおっしゃっていますが、勉強したくない子ほどある程度強制してでも最低限の学力をつけさせるべきだと思うのですが、いかがでしょうか?
 ありきたりの例で申し訳ないですが、歴史を知らないと同じ過ちを繰り返しかねないですし、理系的な素養がないと原発事故のようなものが起きたときに、得たいの知れないブラックボックスの話だととらえてしまいかねないですし。
 物理やさんの見解をお聞きしてみたいです。
 
 
by まいくる (2016-02-29 00:37) 

Secret

今、大学に行く途中ですけど
今日の記事は本当に勉強になりました。
私も
何もよく知らない状態でずっと悩んでいたような気がします。
それよりも
色々行動して、勉強して
知識や経験を広げてから
悩もうと思いました!

ブッチーさん
ありがとう!!!
by Secret (2016-02-29 08:48) 

東大生トーリ

僕は鉄緑で教えてます。
同僚から天才家庭教師がいるとのことで
このブログを薦められましたが
もう知ってるちゅうねん
(笑)
同級生に物理屋さんの生徒で多分大学で一番物理ができる生徒がいて
その人から聞いてましたもん。
ちなみに
その生徒だった人に
鉄緑で教えてみない?と聞いたら
そんな低レベルなところで働きたくないと
断られました。
まあ
アルバイト集団なのは確かですからね…
採用も甘いですし…

…と
普通は教育業界に舞い降りないんですよ
天才は
物理屋さん以外は(笑)

そりゃ
物理屋さんが業界トップなの当たり前だわ
…と書いてますが
僕も以前は自分で天才だと思ってましたから(笑)
でも物理屋さんを知って3秒で自分のプライドは崩壊しました(笑)

長文失礼致しました
by 東大生トーリ (2016-02-29 08:59) 

デーモン山崎

多分
もうブログも八年目ですよね?
七年間休まず毎日更新できることが
まず僕には信じられません。
…というか
そんな忍耐力というか
継続力のある人に出会ったことはありません。

だから皆さんに信頼されて家庭教師をプロで15年も続けられるんですね!
人間的信頼できる方に教えてもらえる生徒さんが幸せですね。

僕だって物理屋さんや健一さんのような
信頼できる人としかできません
by デーモン山崎 (2016-02-29 16:48) 

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