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なぜ超弦理論なのか [科学ネタ]

なぜ私が超弦理論の研究に至ったか
これは授業でよく質問されますが
いつも説明する時間がないので…と断ります。
今日はこれを簡単に書いてみたいと思います。

私が学生の頃は超弦理論は言わば
オカルト、宗教のようなものだと言われていました。
こんなもん研究してたら、おかしな人間だ
そういう考えが主流でしたし、私が論文を高校時代に書いたものも
数学的には正しいかもしれないが
それは空理空論だと一笑に付されました。
まず、まともに読んで下さる教授は日本にはいませんでした。
しかし…
時は流れ
最近は空前の超弦理論ブームと言っていいほど
超弦理論はもてはやされ
超弦理論こそが究極の理論だとも言われ始めています。
実験でもヒッグス粒子が見つかったり…様々な超弦理論への道が
開けてきていると思います。

私がこの理論に取り組んだのは高校一年の夏でした。
一般相対性理論が数学的にやっと納得がいったくらいの頃です。
ふと思ったのです。
ニュートンが絶対空間、絶対時間をとなえ
(今でも時間は過去から未来へ向かって
流れていると思うのが一般の人の感覚かもしれませんが
それはアインシュタイン以前の感覚ですので、そろそろ改めたほうがいいです。)
それをアインシュタインが、時間と空間は相対的である。
つまり観測者によって時間や空間が伸び縮みするということが示したわけです。
そこで、今まで過去から未来へ流れている時間は
人間の単なる思い込み、そう感じる錯覚なのだということが示されました。

その話を理解した私はふと思ったんです。
時間が錯覚ならば
空間も錯覚みたいなものなのではないか?
これが高校一年生の私が感じた最初の疑問です。
私たちは現在のところ時間一次、空間三次元
つまり時空四次元で生活をしていると思いこんでいます。
それではその証拠は?ということを考え始めるんです。

この思想は中学三年生の頃に読んだ
デビッド・ヒュームの革命的な議論に端を発します。
ヒュームは懐疑論を唱えました。
私が哲学の本を一冊推薦しろと言われれば彼の本を推薦します。
簡単に要約などできないのですが
簡単に書いてみますと
私たちが本当にこの場に実在するのかという議論です。
私が実は水槽の中の脳で、様々な出来事、感情は電気信号で制御された
全てはヴァーチャルな世界だとしても
全く矛盾なく全てのことは説明がつきます。
私が確かにこの世界が現実のもので、現実に存在するということは
どのようにして示せるでしょうか?
そういう問題をヒュームは投げかけるのです。曰く我々は知覚の束に過ぎないと。
また、科学で使う因果関係もヒュームは人間の心理的素因に過ぎない、
つまりある事実があってそこから次の事実が起こる
その事実同士は真であっても事実→事実の
→の部分は真でもなんでもなく
人間がそう思いたいから思っているだけだというのです。
これは科学者にとって非常に鋭く、痛い指摘です。
人間は前後関係をすぐに因果関係だと誤認する癖があります。
例えば
昨日勉強しなかった→今日の試験が悪かった
という時間的な前後関係があると
すぐに今日の試験が悪かったのは昨日勉強しなかったせいだ
と因果関係で結びたくなります。
それをヒュームは「ある人がそう思いたいだけ」で
何の論理学的適正さもないのだと切って捨てるんです。
それはその通りです。
今日の試験が悪かったのは
本当はもっと前から勉強が足りなかったからかも知れませんし
当日コンディションが悪かったからかも知れませんし
偶然苦手分野が出たのかもしれません。
その原因を「昨日勉強しなかった」と決めつけるのは本人がそう思いたいだけ
つまり心理学的素因であって、真でも何でもないんです。
科学は大半がこの間違えを犯しています。
私だって、宇宙の始まりを超弦理論で示せるというのは
客観的に科学的に導出されたものでも何でもなく
そうあって欲しい、と思うからなんです(笑)
客観性を標榜する科学において因果関係というのは基本中の基本です。
その因果関係に客観性など少しもないとヒュームは言う訳です。
冷静に考えてみれば、私たち科学者は
この原因はこうであるはずだ→あって欲しい、を最初に考えて示そうとしている
わけです。

そんなヒュームの思想を受け
私は空間が時空四次元だというのも
人間がそう思うだけ、思いたいだけではないか、
と考え始めたのです。

また、量子論と相対論をみると
全ての物質は粒子としても波としても振舞います。
一般に小さくなればなるほど波動としての性質が強く出て
大きくなればなるほど粒子としての性質が強くでる。
このことが20世紀にはっきりしたにも関わらず
超弦理論以外の全ての理論は
全てのもののもとであるもの、素粒子などは
粒子であるというのです。
これに私は大きな違和感を感じました。
小さくなればなるほど波動性が強まるのに
究極的に小さい、万物の根源は粒子なの???
これは私には到底理解できません。
またこの無理な仮定は数学的な発散という大きな矛盾を
生み出しました。

ここから私の超弦理論の旅は始まったのですが…
それ以来地獄のような数学の勉強を強いられました(笑)
あるものを追求したい、夢をかなえたい
そういう理想を実現しようとするなら
嫌というほどの単純で苦痛な努力が必要なんです。
これは何事にも言えることです。
努力が楽しい、というのは理想論で
運のいい人はそうなのかも知れませんが
私にとって果てしない努力というのは非常に苦痛なことです。

まあ
こんな結論じみたことをいう私もまだまだ道半ば
宇宙について少ししか
理解できていないのだと思います。
どこまで行けるか分かりませんが
真理のしっぽくらいは掴みたいと思って努力を続けています。
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まいける

大栗先生の本が難しかったので、先日
「超ひも理論をパパに習ってみた 天才物理学者・浪速阪教授の70分講義 」
(KS科学一般書)橋本 幸士 著
という本を読んでみましたが、なかなか面白かったです。

ぶっちー先生の科学ネタ、楽しみにしていたので今回の更新、とても嬉しいです。

by まいける (2015-04-25 01:14) 

正一

とても面白いです!

お時間あるときもっと物理屋さんの研究のお話を(できればわかりやすく)教えてください!

お話聞いてふと思ったのですが、こういう言い方は失礼かもしれませんが、物理屋さんにとって日常生活は疑問だらけじゃないですか?

人間は勝手に解釈して、思い込めるから日常生活が成り立つと思うのですが、疑い始めるとキリがないと思います。

物理屋さんはそう言ったことに対して辛くはないですか?
by 正一 (2015-04-25 07:47) 

元カノAKI

最近英語の記事や科学の記事、内容が真面目過ぎてコメントが気軽に書きづらいで~す(笑)
by 元カノAKI (2015-04-25 07:57) 

YUI

ウフフ、私もそれはAKIさんと同じ。流石に書きづらいわよね。私ブッチーが話す物理の話わかったことないし(笑)それにしてもAKIさんて心が折れませんね。「元カノ」って私も外したのに…。
今日もブッチー、寝癖をあまり直さずクマさんみたいにお仕事いってるかなあ
(笑)
私も一日しっかり仕事をしてきまーす!
by YUI (2015-04-25 08:10) 

ヨッシー

何故、今ノーベル賞を多数だしている標準模型は駄目なのでしょうか?
by ヨッシー (2015-04-25 08:22) 

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