SSブログ

常識について [雑感]

よく高校生などの授業をしていると
「大人は常識に縛られているから駄目だ」
という話を聞きます。

そこで私はその根拠について聞きますが、
はっきり答えをもらったことがありません。
これは常識に対しての考えを根本的に誤っていますので、
それについて説明したいと思います。

常識は決して私達を縛るものではありません。
むしろ、私達を自由に解放してくれます。

私達の社会には秩序が必要です。
秩序が無ければ、個人個人の安全や権利等が侵害されるからです。
私達が地球という小さな星で共存し、
持続可能な社会を築き、生きていく為に秩序は不可欠です。

その秩序を守るのがルール(規則)です。
ルールと言えば一般的に法律を思い浮かべる人が多いと思いますが
ルールの中には法律しかない訳ではありません。
(これも常識について大きな誤解が生じている証拠です。)

実は社会のルールのほとんどは常識でできています。
例えば毎日私達は服を着替えます。
服を脱ぐという行為について考えましょう。
私達は家では着替える為に服を脱ぎ、全裸になりますが
電車の中や交差点の真ん中で服を脱ぐことはありません。
これは小さい頃から両親や様々な人からの教育によって
服を脱いでいい場所といけない場所が「常識的」にわかっているからです。

もし、この常識を無くしてルール全てを法律でまかなうことになったら、
それは大変な世の中になります。
家では服を脱げる、電車の車内や交差点はダメだが、
海水浴場やプールや公衆浴場はOK、などと
考えつく全ての場合について法律で決めなくてはなりません。
服を脱ぐだけでもこれだけ沢山の法律が必要になるのです。
全てのことについて法律で決めたら……
一体どのくらいの量になるでしょうか?

実際はそんなことを決めなくても済むのは「常識」があるからです。
私達は法律で全てを決めなければならないことが
馬鹿げたことであることは「常識的」にわかるのです。

常識がない、法律だけの社会には、自由がないことは明白です。
もし、ルールが大量の法律だけになったら
まずその法律を全て覚えないといけません。
この労力だけで大半の人達の創造的な活動というのは失われてしまいます。

イギリスでは法律の少ない国家ほど成熟した国家だという格言があります。
これは正にその通りです。
独裁国家になればなるほど、国民を縛る細かい法律が増えます。
国民の常識を失くし、国民を考えさせないように仕向けます。

私たち日本にも昔から美徳や道徳、常識が沢山あります。
しかし、これは日本がアメリカナイズされる過程で失われつつあります。

アメリカは多民族国家ですので、
共通のcommon sense(常識)が中々持ちにくい、というお家事情があるので
法律が増える国家にならざるを得ないのも、同情の余地があります。
細かいことまで法律で決めないと、文化やバックグラウンドの
違いで国民同士の争いが絶えなくなってしまいます。

でも、これは本来は悲しいことなのです。

そのおかしなアメリカを手本に私たちは
自分たちの国の常識を破壊しようとしています。

この典型的な例が次の例です。
私はこの台詞を初めて聞いた時、
ついに来るべき時代が来たかと、悲しく思いました。
それは
「法律に違反していなければ何をやってもいいのだ」
という台詞です。

ここまで読んで頂いた方には
この台詞が如何に稚拙で、どうしようもないことだということは
お分かりかと思います。
敢えて付言すれば、
「法律に違反してなければ何をやってもいい」
ということなどそもそもあり得ないのです。

私達の社会のルールの大半は常識で
法律はほんのごく一部でしかないのです。
それを守りさえすれば、全てのことができるなど
本末転倒も甚だしいです。
しかも、こんな発言は自分で自分の首を絞めるようなものです。
結局この発言は法律が増えることを助長し、
自分自身の自由を奪う結果を導くからです。
私たちは良識を持って法律の少なくて済む
社会を目指すべきだと思います。

最後に誤解のないように書いておきますが、
私の書いた常識は全体についてであって
個々の常識についてそのまま受け入れることを意味しません。
一つ一つの常識に関しては個々人が考え、
議論してより良いものにしていくべきだと思います。

国会議員や官僚や政府が決めた
法律で私たちの国家は成り立っているのでは
ありません。私たち一人一人の知性、良識こそが、
国家のあり方、つまり根幹を成すのです。
だからこそ、教育は個々人の知性と良識を
養うべきだと私は思います。

The aim of education is the knowledge
not of the fact, but of values.
です[exclamation×2]
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0