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スぺーザーを用いたナノレーザーの実証 [科学ネタ]

今回はnatureの論文に取り上げられたもので
一般の人のも分かりやすいもの
(と…言っても難しいかもしれません[たらーっ(汗)]
を書いてみたいと思います。
論文の内容自体とはあまり関係ないのですが
今、物理学でホットな話題を書いてみたいと思います。

物理の特にナノテクノロジーの分野で
今急速に成長しているものの一つに
ナノメートルスケールのプラズモン効果というのがあります。

プラズモン効果とは、金属中の自由電子が集団的に振動することによって
全体として粒子のように振る舞うことを言います。
金属のナノ粒子ではプラズモンが表面に局在します。
これを局在(表面)プラズモンと言います。

特に金コロイドなどの金属ナノ粒子では、
可視~近赤外域の光電場とプラズモンがカップリングして
光吸収が起こり、鮮やかな色をだします。
この現象を局在(表面)プラズモン共鳴(SPR)と言います。

プラズモン共鳴においては局所的に著しく増強された電場も発生します。
光エネルギーが表面プラズモンに変換され、
金属ナノ粒子表面に光のエネルギーが蓄だけではなく、
光の回折限界より小さな領域での光制御が可能とするものです。

この技術はセンシングや、医学、画像化技術まで
様々な技術に応用されることが期待されています。

しかし問題があります。
このナノプラズモニクスを実用化する為には
コヒーレントなプラズモン場を発生すためのデバイスがありません。
(コヒーレンス(Coherence)とは、干渉のしやすさ(干渉縞の鮮明さ)を表すものです。
コヒーレントはその形容詞で簡単に言うと干渉性があるということです。)
現実には完全にコヒーレントな光は存在しません。
その中でもコヒーレントに一番近い光はレーザーです。
レーザー光は空間的にも時間的にも非常にコヒーレンスの高い光です。
逆に太陽光や電球、蛍光灯の光はコヒーレンスの低い、完全インコヒーレントに近い光です。
コヒーレントとインコヒーレントの中間の状態を、部分コヒーレントということもあります。

レーザーがコヒーレント光子の誘導放出を
起こすのと同じように
スぺーザーは利得媒質(光をどんどん増やす媒質です。)
付近の共鳴ナノ構造体における
表面プラズモン(簡単に言うと金属ナノ構造体における自由電子の振動です)
の誘導放出を起こしうると提案されています。
しかしこのスぺーザー実現の試みも
金属の吸収損失という難問に直面しています。

最近ではこの答えとして
局所的な伝播表面プラズモンでは光学利得で損失を
補償するという考えが最近実施され
開放経路での伝播表面プラズモンの増幅まで可能になりました。
しかし、依然として
金属ナノ粒子の存在下で色素分子の誘導放射増強は
スぺーザーに存在するフィードバック機構を欠いています。

それを今回アメリカのノーフォーク大学のグループが
金の原子核と色素をドープした
シリカシェルを持つ直径44nmのナノ粒子で
利得によって局所表面プラズモンの損失を完全に克服して
スぺーザーを実現することを示しました。
これによってナノプラズモニクスの基本的な理解が深まり
実際的な応用開発が進むものと考えられます。



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