絶対零度よりも低温の量子気体 [科学ネタ]
受験で忙しすぎてこのコーナーは久しぶりの登場になります。
今年の一月から結構面白い発見があって
このコーナーを書きたかったのですが時間的に無理でした。
時間があるときにそれらを少しでも紹介していきたいと思います。
今年の一月のnatureに載っていた論文に
Quantum gas goes below absolute zero
つまり絶対零度よりも低温の量子気体というものがありました。
これについて今回は書いてみようと思います。
高校と大学1,2年では基本的に古典物理学を学習する訳ですが
その中で
温度に関して次のような説明をします。
「気体の絶対温度は気体を構成する粒子の平均運動エネルギーであり、
絶対零度は全くエネルギーをもたない状態」だと
空気の分子の運動が激しい状態を私たちは温度が高いと感じるわけです。
その運動がだんだんゆっくりになっていくと温度は下がります。
当然最終的には静止し、そのときの温度が絶対零度即ち-273.4℃な訳です。
ただ、これは古典的な考え方で
量子論を学ぶと
ハイゼルベルグの不確定性原理というのがあり
「静止」はできず、イメージ的に言うと揺らいだ状態にあるということがわかります。
今回の論文は
古典的には分子が静止するだろう温度、即ち絶対零度よりも
低い気体をつくったというものです。
古典的にはあり得ないはずの気体です。
どのように作るかというと
通常、ある気体が~℃であるとき、それを構成する粒子の大半が
平均付近のエネルギーを持ち、少数の粒子だけが
より高いエネルギーを持っているのですが
その状況を反転させて
より高いエネルギーを持つ粒子の方が多くなるようにすると
絶対温度の符号がプラスからマイナスに変わるんです
これはドイツのルードヴィッヒ・マクシュミリアン大学ミュンヘンによる研究ですが
絶対零度以下の温度をつくるために
カリウム原子からなる超低温量子気体を用いたそうです。
そしてレーザーと磁場を使って個々のカリウム原子を格子状に並べると
(大学入試の数学か化学の問題が作れそうです。)
プラスの温度では当然原子は互いに近すぎるため反発しながら
配置を安定している訳ですが
そこに急速に磁場を調整して原子を急に引きあうようにすると
最も安定でエネルギーが低い状態にあった原子がもっとも
高いエネルギー状態に移動してしまうんです。
勿論、通常の温度でこれをやれば反転した途端に
あっという間に原子の配置は崩れてしまうのですが
絶対温度近辺では周りのレーザーを調整することでこのバランスを保つこと
ができるのです。
わかりやすくいうと、ある平衡状態からある平衡状態に
さっと転移するのです。水→水蒸気というような相転移をイメージして頂いても
構いません。おそらく宇宙もこのように真空の対称性が崩れ、それが相転移して
できたものと考えられています。
この方法によって絶対零度よりわずかに高い温度から
絶対零度より10億分の数度だけ低い状態が作れたそうです。
これは非常に応用が効く発見だと思います。
私は最近材料化学に興味があるのですが
この方法を応用すれば新しい面白い材料ができそうです。
また宇宙科学をやってきた私がピンとくるのが
絶対零度以下の気体が、宇宙をどんどん膨張させている
「ダークエネルギー」の性質に酷似しているということです。
そういう意味で
今回の実験は、実験室に「宇宙」を作ったと言えるかも知れません。
非常に興味深いです
(オマケ)
私たちが通常暮らしている世界は量子の世界からみれば
非常にマクロな世界です。
マクロな世界では物事は連続的に変化し、感覚的にそれが
当然だと思ってしまうのですが
量子の世界ではそれは成り立ちません。
離散的なエネルギーしかあり得ないのです。
つまり1→2→3のように飛び飛びの値しか取れません。
1.2とか2.5とかいうエネルギーはないのです。
そんな馬鹿なと思われる方もいるかもしれませんが
私たちの世界にも全く同じ現象があるんです。
それは波動です。
波動は基本振動、二倍振動、三倍振動…と離散的値しかとれません。
なぜなら間は打ち消しあってしまうからです。
量子もそのようなイメージでとらえると、飛び飛びの値しか取れないことに
納得して頂けるのではないでしょうか。
ですから平衡状態も徐々に移って…とは
ならずに瞬間的にテレポートするのです。
今回の実験も絶対零度で止めることはできず
絶対零度をまたいでしまうんです!!
今年の一月から結構面白い発見があって
このコーナーを書きたかったのですが時間的に無理でした。
時間があるときにそれらを少しでも紹介していきたいと思います。
今年の一月のnatureに載っていた論文に
Quantum gas goes below absolute zero
つまり絶対零度よりも低温の量子気体というものがありました。
これについて今回は書いてみようと思います。
高校と大学1,2年では基本的に古典物理学を学習する訳ですが
その中で
温度に関して次のような説明をします。
「気体の絶対温度は気体を構成する粒子の平均運動エネルギーであり、
絶対零度は全くエネルギーをもたない状態」だと
空気の分子の運動が激しい状態を私たちは温度が高いと感じるわけです。
その運動がだんだんゆっくりになっていくと温度は下がります。
当然最終的には静止し、そのときの温度が絶対零度即ち-273.4℃な訳です。
ただ、これは古典的な考え方で
量子論を学ぶと
ハイゼルベルグの不確定性原理というのがあり
「静止」はできず、イメージ的に言うと揺らいだ状態にあるということがわかります。
今回の論文は
古典的には分子が静止するだろう温度、即ち絶対零度よりも
低い気体をつくったというものです。
古典的にはあり得ないはずの気体です。
どのように作るかというと
通常、ある気体が~℃であるとき、それを構成する粒子の大半が
平均付近のエネルギーを持ち、少数の粒子だけが
より高いエネルギーを持っているのですが
その状況を反転させて
より高いエネルギーを持つ粒子の方が多くなるようにすると
絶対温度の符号がプラスからマイナスに変わるんです
これはドイツのルードヴィッヒ・マクシュミリアン大学ミュンヘンによる研究ですが
絶対零度以下の温度をつくるために
カリウム原子からなる超低温量子気体を用いたそうです。
そしてレーザーと磁場を使って個々のカリウム原子を格子状に並べると
(大学入試の数学か化学の問題が作れそうです。)
プラスの温度では当然原子は互いに近すぎるため反発しながら
配置を安定している訳ですが
そこに急速に磁場を調整して原子を急に引きあうようにすると
最も安定でエネルギーが低い状態にあった原子がもっとも
高いエネルギー状態に移動してしまうんです。
勿論、通常の温度でこれをやれば反転した途端に
あっという間に原子の配置は崩れてしまうのですが
絶対温度近辺では周りのレーザーを調整することでこのバランスを保つこと
ができるのです。
わかりやすくいうと、ある平衡状態からある平衡状態に
さっと転移するのです。水→水蒸気というような相転移をイメージして頂いても
構いません。おそらく宇宙もこのように真空の対称性が崩れ、それが相転移して
できたものと考えられています。
この方法によって絶対零度よりわずかに高い温度から
絶対零度より10億分の数度だけ低い状態が作れたそうです。
これは非常に応用が効く発見だと思います。
私は最近材料化学に興味があるのですが
この方法を応用すれば新しい面白い材料ができそうです。
また宇宙科学をやってきた私がピンとくるのが
絶対零度以下の気体が、宇宙をどんどん膨張させている
「ダークエネルギー」の性質に酷似しているということです。
そういう意味で
今回の実験は、実験室に「宇宙」を作ったと言えるかも知れません。
非常に興味深いです
(オマケ)
私たちが通常暮らしている世界は量子の世界からみれば
非常にマクロな世界です。
マクロな世界では物事は連続的に変化し、感覚的にそれが
当然だと思ってしまうのですが
量子の世界ではそれは成り立ちません。
離散的なエネルギーしかあり得ないのです。
つまり1→2→3のように飛び飛びの値しか取れません。
1.2とか2.5とかいうエネルギーはないのです。
そんな馬鹿なと思われる方もいるかもしれませんが
私たちの世界にも全く同じ現象があるんです。
それは波動です。
波動は基本振動、二倍振動、三倍振動…と離散的値しかとれません。
なぜなら間は打ち消しあってしまうからです。
量子もそのようなイメージでとらえると、飛び飛びの値しか取れないことに
納得して頂けるのではないでしょうか。
ですから平衡状態も徐々に移って…とは
ならずに瞬間的にテレポートするのです。
今回の実験も絶対零度で止めることはできず
絶対零度をまたいでしまうんです!!
2013-03-12 00:45
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