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興味のあること [科学ネタ]

今週のnatureにマックスプランク研究所の論文で
「電気的に捕獲した多原子分子のシジフォス冷却」
というものがでました。
これには非常に興味があり
昨日から熟読しています。

簡単にお話できるかわかりませんが
簡単に言うと
多原子分子というのは一般に極低温まで冷却する方法が
今まではありませんでした。
というのも多原子分子は複雑な内部構造や
双極子双極子間の相互作用などがあるからです。
今回の論文はシジフォス効果を通して各冷却サイクルの
運動エネルギーの大半を除去する方法を提案しています。
興味深いです。

レーザーによる冷却というのは私が高校生くらいのときに
始まりました。
一般の方はレーザーで冷却???と思われるかもしれませんが
冷却というのは簡単に言うと原子の運動を止める方向にもっていけばいいのです。
そこでレーザーを原子にぶつけて動きを鈍らせてやるわけです。
…といいましても
ビリヤードのような感じでイメージをしていただくと
それはそれで問題があります。
光というのは量子ですので、粒子のようなイメージではありません。
粒子のように考えるとぶつけかたによっては加速してしまうのではないか
と思われてしまいます。
運動量で考えるとわかりやすいです。
分子にぶつかった光子はランダムに外に散逸されます、
その運動量の平均が全体として
ゼロになるので分子は冷却されるのです。
この方法は以前から知られており、ドップラー冷却と呼ばれていました。
しかしおかしなことに実際に実験してみると理論上のドップラー冷却による
限界温度よりも低くなるのです。

これを説明してくれるのがシジフォス効果です。
ここでは光の波としての性質でこの効果を説明してみます。
レーザー光のような可干渉に優れた光は一般に定常波として存在します。
定常波には光の強い部分と弱い分、山と谷があります。
この山の部分で原子が強制的に光を吸収させられると
光を自然放出して減速して谷に落ちてきます。
当然減速した原子は山を登るのが大変です。
そしてこれを繰り返していうちに山は登れなくなります。
しかし、それでもあがくんです。
登ろうとしては落ち、登ろうとしては落ちる
それを繰り返しているうちにやがて疲れて動かなくなる
つまり減速して極低温になるわけです。
これがシジフォス効果の簡単な説明です。

もう長くなってしまいましたので
この辺で終わりにしますが
シジフォス効果はなかなか複雑な多原子分子に適用するのは
難しいです。
そこをうまく突破する非常にうまい冷却法が考えられました。
それが今回の論文です。
まだ不十分なところも多いですが一つのアイデアとして
非常に興味をもって論文を読んでいます。
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